所長の主張

消費税の軽減税率

 今、与党で平成27年10月からの消費税率の引き上げを視野に入れた軽減税率の導入を検討しています。 詳しくはこちら
  これに対して、産業界では軽減税率の導入に反対しているのは周知のとおりです。軽減税率を導入した場合、企業の納める消費税を計算するために膨大な事務負担が予想されるからです。事務負担のみならず、軽減税率の適用かどうかの判断にも迷うところが多いことは諸外国の例でも明らかです。企業の現場では事務負担の増加に加えて、軽減税率適用に当たっての混乱は十分に予想されるところです。産業界が反対するのは当然のことと思われます。

  与党で検討中の「飲食料品」の軽減税率を例に判断に迷うものを考えてみます。
1、食料品かどうかの判断
   豚肉、牛肉は食料品だけど、豚、牛そのものは・・・
   米のうち、食用米は食料品だけど、質の落ちるドッグフード用の米は・・・
2、食料品は軽減税率適用だけど外食は除くとした場合
   テイクアウトのお弁当は外食に当たるか・・・
   おむすびやコロッケは外食か・・・
 3、菓子類を「飲食料品」から除くとした場合
   ジャムパンなどいわゆる菓子パンは菓子類か・・・
   ホットケーキミックスなどお菓子の素は菓子類か・・・.
   などなど

  軽減税率の導入する場合には「インボイス」方式が前提となります。すなわち、税率ごとに区分した請求書の発行が求めれらます。仕入税額控除をするためには、インボイスの保存が義務付けられることになるからです。
  インボイス方式を採用している、EU諸国では、免税事業者はインボイスを発行できないこととされており、免税事業者は付加価値税を請求できないとされています。その結果、価格が同じである場合には、免税事業者からの購入を避ける動きが出てくるでしょう。そのような理由から、EU諸国では、免税事業者は取引から除外されがちであるとも聞いています。
  
  与党で検討中の制度として「マージン課税制度」があります。
  中古品の販売については、その実現したマージン(売価-仕入価格)のみを課税対象とする特例が設けようというものです。
  中古品の販売とは、具体的には中古自動車販売業者、質屋、古物・美術商、古本屋等があげられています。

与党税制協議会 「消費税の軽減税率に関する検討について」より引用

 消費者や免税事業者からの仕入については仕入税額控除が認められない。その結果、商品の大部分を消費者等から仕入れざるを得ない中古品販売業者(中古自動車販売業者、質屋、古物・美術商、古本屋等)においては仕入税額控除ができないため、中古品取引に影響を及ぼすおそれがある。
 欧州諸国においてはこうした問題を避ける観点から、中古品の販売については、その実現したマージン(売価-仕入価格)のみを課税対象とする特例が設けられている。

 我々消費税の計算に携わる者としては、軽減税率が導入されても何とか対応していかなければなりませんが、大変な時代になってきたものです。


所長の主張 バックナンバー

教育資金の一括贈与の非課税措置は税制改正の目玉か

 直系尊属(例えば、曾祖父母、祖父母、父母等)が30歳未満の者の教育資金に充てるために金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合には、受贈者1人につき1,500万円)までの金額に相当する部分の価額については、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税の非課税とされました。
 この制度が平成25年度税制改正の目玉とマスコミ各社が掲載していました。

 しかし、この制度は、以下のようにはなはだ使い勝手が良くありません。
 1、学校等に対して支払われたことが、学校等からの領収書等により確認できる費用が対象
 2、塾や習い事など、学校等以外の者に支払われる費用は1500万円のうち、500万円までの非課税枠に該当
 3、下宿代やアパート代、帰省旅費などは非課税の対象から除外
 4、教科書代や学用品費、修学旅行費、学校給食費などは500万円までの非課税の対象
 5、金融機関には、領収書の原本を提出する必要があること
 6、教育資金以外に使用したときは贈与税の対象となること
 7、受贈者が30歳に達したときの残高は贈与税の対象となること

 この制度を利用しなくても、従来から扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるための贈与は贈与税が非課税とされています(相続税法第21条の3)。

 国税庁タックスアンサーでも以下のように説明されています。

 非課税となる財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られる。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税が課税されることになる。(タックスアンサーNo.4405「贈与税がかからない場合」)

 親が子供のために教育費や生活費の面倒を見るのは当然であり、これが贈与税の対象だとは思わないで負担していたことでしょう。おじいさんが孫のためにこれらの資金を出したとしても同じことです。
 この場合の注意点は、以下に集約されるでしょう。
 1、生活費や教育費であること
 2、必要な都度支払われること

 すなわち、過剰な仕送りの結果、預金されていたり株や土地の購入に充てられていなければ、学費のみならずアパートの家賃や食費に充てても贈与税の対象とならないということです。

 マスコミが大げさに報道した「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」を使うよりも、従来から認められていたものの方がずっと使い勝手が良いものです。マスコミが不勉強なのか、政府の施策を持ち上げる必要があったのか、さて、どちらでしょうか。


なぜ今、特別徴収か

 今、総務省が号令をかけて、全国の自治体が住民税の特別徴収に取り組んでいます。

 会社は、従業員の給料から住民税を天引きして納税者(従業員)本人に代わって自治体に納付するのが特別徴収というものです。これに対して、納税者本人が直接納付することを普通徴収といいます。

 特別徴収は給料の支払者に義務付けられている制度ですが、小規模の企業については、会社の任意に近い状態で長年取り扱ってきました。それが、なぜ今急に従業員2人、3人という企業にまで特別徴収を推進するのでしょうか。今回は、そこを考えてみます。

 地方税法第321条の3において、「ただし、当該市町村内に給与所得者が少ないことその他特別の事情により特別徴収を行うことが適当でないと認められる市町村においては、特別徴収の方法によらないことができる。」明記されており、この規定に基づいて、小規模の企業については特別徴収としないことを認めていたものと思われます。この法律は現在でも廃止されていないにもかかわらず、ごく小規模の企業にも特別徴収を推進する理由はどこにあるのでしょうか。

 最初に、特別徴収制度のメリットとデメリットを挙げてみましょう。
 1、メリット
  (1)  従業員にとって、金融機関へ納税に出向く手間を省くことができること。
(2)  特別徴収は年12回なので従業員の1回あたりの納付額が少ないこと。
(3)  自治体にとっては滞納の未然防止が期待できること。
 2、デメリット
  (1)  会社にとって、原則として毎月の納税の手間がかかること。
(2)  従業員の入社、退職のつど手続きが必要なこと。
(3)  年末調整や確定申告のの扶養控除などが間違っている場合には、納付額の変更通知が送付されて給料からの天引き額を見直して当初の通知額に追加して天引きしなければならないこと。

 また、特別徴収制度には大きな問題点があります。その主なものを挙げてみましょう。
1、  従業員が所得税の確定申告をしている場合には、その確定申告の情報が会社に送付されること。
 確定申告の際に、給与所得以外の住民税を自分で納付する(普通徴収)と記載すれば、会社に送付される住民税の納付額決定通知書には給与所得だけが記載されますが、上記「メリット」の(1)と(3)はメリットでなくなる上、給与分は特別徴収、その他の所得については普通徴収と、同一人に対して2重の徴収手続きをすることになり、自治体の事務負担が倍増します。
 こうして事務負担が増大しても全て税金で賄われるから自治体担当者としては何ら困らないということでしょうか。
2、  所得税の確定申告の情報の中身は「どんな種類の所得があるのか」をはじめ、究極の個人情報といえるものが満載です。今、個人情報の保護を強く言われていますが、そんな確定申告の情報を記載した通知書を会社を経由して従業員に渡されるのです。(注)
3、  住民税の納付を遅れると、会社にペナルティが課されます。従業員から預った税金を納めないのは横領だということでしょう。
 ペナルティは、延滞金のほか地方税法第324条第2項で「納入すべき個人の市町村民税に係る納入金の全部又は一部を納税しなかった特別徴収義務者は、3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金とする」と規定されるもので、たいへん厳しいものです。
4、  従業員の入社、退職の際の手続きを失念すると面倒なことになります。たとえば、従業員が退職した際の手続きを忘れると、その後も退職した元従業員の住民税を会社が払い続けるといったことも起こりかねません。その場合には、住民税を元従業員に請求することになりますが、スムーズに支払われるとは限りません。
5、  住民税の徴収事務を行う会社にとってはメリットは何もなく、デメリットばかりです。専任の事務員がいる会社はともかく、小規模の企業では事務員を置かないで、社長が片手間に事務をこなしているところが少なくありません。そんな企業では、特別徴収は大変な負担を強いられることになります。
 そのような小規模企業のために、地方税法第321条の3のただし書き(「・・・特別徴収の方法によらないことができる。)の規定があるのではないでしょうか。

 以上のような問題の多い特別徴収制度を推進する理由は、ひとえに「滞納の未然防止」という自治体の都合だけではないかと思います。従来から、滞納者に対する姿勢は、国に比べて地方は甘いといわれていました。それは、地方公共団体の税の徴収担当者の怠慢だといえましょう。その結果、滞納者の増加が自治体の財政を圧迫してきたということにほかなりません。そのツケを会社に負わされたのではたまりません。

 私の地元、静岡県の特別徴収の推進パンフレットでは特別徴収が義務であることを強調し、地方税法第321条の3のただし書きの「・・・特別徴収の方法によらないことができる。」について何の説明もありません。特別徴収推進のパンフレットには自治体にとって都合のいいことだけを記載し、都合の悪いことはあえて伏せているように思います。これは、他の全国の自治体も同様です。

 また、浜松市の、特別徴収義務者への説明資料には、「浜松市では、入札参加資格や指定管理者、一部の補助金等の申請要件に特別徴収の実施を義務づけ、浜松市が税金を使って行う事業等を利用される方が、法律に定められた義務を遵守していただいていることを確認しております。・・・」と、いうなれば、「浜松市で行う入札に参加したかったら特別徴収にしなさい。」と恫喝とも思われる表現をしております。

 民間の保険会社であれば、会社が集金を代行すれば手数料が支払われます。役所は給与を支払う会社に住民税の集金を代行させて手数料を支払わないばかりか、納付期日に遅れるとペナルティを課すという、およそ民間企業同士のお付き合いでは考えられない常識に反したものです。法律や条例を制定すれば、常識とかけ離れたことも通用してしまうのでしょうか。

 そんな、個人情報の軽視をはじめとする大きな問題を抱えている制度を、総務省が音頭をとって、都合の悪いことは伏せてまで全国の自治体が一斉に推し進める現状を恐ろしく感じるのは私だけでしょうか。
 
 (注)最近は、申告内容については個人別に封入した上で会社に送ってきます。一歩前進ですね。当然のことながら税額は会社に知らせますので、見る人が見れば会社からの給料以外の所得がどの程度あるのかはわかります。


難解な「簡易課税制度」

  事業者が納める消費税を計算するに当たって、簡易課税という制度があります。
 タックスアンサーに簡易課税制度を次のように説明しています。

 消費税の納付税額は、通常は次のように計算します。
 (課税売上高)×4%-(課税仕入高)×4%
 しかし、その課税期間の前々年又は前々事業年度の課税売上高が5千万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができます。
 この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというものです。この一定割合をみなし仕入率といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等、サービス業等及びその他の事業の5つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。

 みなし仕入率を適用する場合の事業区分は、同じく国税庁のタックスアンサーで次のように説明しています。

簡易課税制度の事業区分の表

 このタックスアンサーの説明には、少し解説が必要です。
 まず第一に、「(課税売上高)×4%・・・」の4%の部分です。消費者は買い物をするときに5%の消費税を負担しています。この5%の消費税は、国税が4%、都道府県税が1%、合計で5%ということです。国税庁のタックスアンサーでは国税のことだけを解説するから4%で正しいわけですが、少々不親切だと感じるのは私だけでしょうか。

 次が事業区分です。卸売業と小売業は「他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業」が同じです。違いは、販売する相手が事業者であるかどうかです。一般に考えられている卸売業と小売業の区別とは違いがあります。

 この事業区分が「難解な簡易課税制度」といわれる所以です。

 魚屋さんの例で考えてみましょう。魚屋さんが扱う鮮魚類の販売は、販売先が事業者であれば卸売り、一般消費者であれば小売りと販売先によって変わります。また、仕入れた魚をてんぷらや煮つけに加工して販売すれば第三種事業(製造業)とされます。
 仕入れた商品を加工しないで飲食店や会社に販売・・・第一種事業
 仕入れた商品を加工しないで一般消費者に販売・・・第二種事業
 てんぷらや煮つけに加工して販売・・・第三種事業
 業務用の車両を下取り販売・・・第四種事業
 以上のように、売上の種類ごとに事業の種類を区分する必要があります。これを区分しないときはみなし仕入れ率の一番低いものとしなけれななりません。上記の場合では、区分していない売上を第四種事業として計算することになってしまいます。すなわち、納税額が多くなり事業者にとって不利な取り扱いです。

 この場合、「軽微な加工」であれば、性質及び形状の変更がないものとして取り扱う。すなわち、卸売りまたは小売としてよろしいとされています。実は、この「軽微な加工」の判断が悩ましいものです。。
「軽微な加工」の例として次のものが挙げられています。
 商品等に名入れ等を行い販売
 仕入れたサッシとガラスを組立て規格品仕様のサッシ窓として販売
 消火器の薬剤の詰替え
 仕入商品を切る、刻む、つぶすなど

性質及び形状の変更があるとされるのは次のものです。
 魚を煮魚、焼魚等加熱加工して販売
 生しいたけを乾燥させて販売
 荒茶を仕入れ、加工して製品茶にして販売
 印鑑の製造販売

 加熱処理、乾燥、塩漬けといった処理をすると製造と説明しながらも、「食肉小売店、鮮魚小売店において通常販売する商品に一般的に行われる軽微な加工(例えば、仕入商品を切る、刻む、つぶす、挽く、たれに漬け込む、混ぜ合わせる、こねる、乾かす等)を加えて同一の店舗で当該加工品を販売する場合には第二種事業に該当する。(国税庁「消費税質疑応答事例」より)」とされており、上記の魚屋さんの場合では、刺身や切り身に加工するのは「軽微な加工」に該当し、販売の相手によって卸売りや小売りの区別をします。

 例を挙げればきりがありませんが、事業区分の判断がいかにに難しいかお分かりいただけると思います。そんなところから、私ども税理士の間で簡易課税と言わないで難解課税とい言う人もいるほどです。


兄弟の相続税まで負担! -相続税の連帯納付義務-

 「相続税の申告をしたら自分の相続税ばかりでなく、他の兄弟がちゃんと相続税を払ったのかまで 気を配らねばなりません。」と言ったら何をバカなことと思われるでしょうか。

 相続税は、遺産をもらった人がその財産に応じて負担し納めるものです。ところが、自分が負担しなければならない相続税を納めたにもかかわらず、兄弟が相続税を滞納しているときは、その分も納税しなくてはならないことがあります。「自分の分ではないから知らないよ」と突っぱねても税務署は差し押さえをして強制的に税金を取り立てます。これが相続税の連帯納付義務というものです。

 連帯納付義務は相続税法34条において「同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。」と定めており、裁判所や国税不服審判所に訴えてもことごとく負けているのが現状です。

 この連帯納付義務には大きな問題をはらんでいます。

 第一に、自分の負担する相続税を完納しても他の相続人が滞納ていると、ある日突然納税の告知がされることがあります。これに異議があっても、前述のとおり差し押さえをしてでも強制的に税金を取り立てるのです。

 第二に、相続税は最長20年の分割納付(延納)が認められます。延納の期間中は時効が進行しません。長期にわたって他の相続人が負担すべき相続税を自分が負担しなければならないかもしれないという不安定な状態が続きます。しかも、他の相続人が滞納しているのかどうかの確認をしようとしても、税務署は個人情報の保護を理由に開示を拒否します。自分が肩代わりすることになるかもしれないというのに滞納状況の確認もできない有様です。共同相続人が互いの納付状況を常に把握し未納者には納付を促す、あるいは納税資金を預かって納付するなどの対策を事前に打つこともできません。

 第三に、相続した財産を超えて相続税を納めなければならないことがあります。土地を相続した場合に当時から値下がりしていることは最近では珍しくありません。そのような場合でも負担の限度とされる「相続により受けた利益の価額」は相続したときの価額を基にしますから、相続した土地を売却しても連帯納付義務により納めなければならない相続税に不足することがあるのです。

 第四に、親族間のつながりが希薄となっている昨今、他の相続人に自分の相続税を負担させることに罪悪感を持つ人が少なくなり、連帯納付義務の規定を設けた意味が薄れていると思われます。相続税の連帯納付義務の規定は、相続人間の連帯感に着目して設けたものでしょうがその前提が崩れているのです。

 相続税の延納や納税猶予の申請をする際には、担保の提供を求められます。国税当局は滞納している場合には担保の処分をします。競売で競り落とされる価格は、俗に半値八掛けといわれるように、正常な価格で売買できないことが多いのです。

 十分な価値(正常な価値という意味で)の担保を提供しているにもかかわらず、上記のような理由で滞納している相続税に満たないからといって共同相続人に不足分を負担を求めるのは酷ではないでしょうか。担保の取り方や担保処分の方法に問題があるのであって、共同相続人に連帯納付義務を課するような規定は合理性を欠くと言わざるを得ません。

 すくなくとも、延納や納税猶予のように担保を取っている場合には連帯納付義務を課すべきではないと思います。このような法律は早急に廃止すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。


参考となるサイト
連帯納付義務の法的問題の再検討 村上潤氏
国税不服審判所 連帯納付義務に関する裁決事例等
[マネー]All About まさか!兄の相続税まで負担
 

※ 平成24年4月以後は、申告期限から5年を経過した場合 及び納税義務者が延納または納税猶予の適用を受けた場合には、 相続税の連帯納付義務が解除されることとなりました。


印紙税の不合理さ

 印紙税を御存知ですか?
 収入印紙のことです。領収書や契約書などの文書に収入印紙を貼り、消印をすることによって印紙税を納付したことになります。

 ところで、どんな場合に収入印紙を貼るのか、あるいは貼らなくていいのかの判断は難しいところがあります。

 『本体価格が29,800円で消費税等が1,490円、合計売上高31,290円』のケースで領収証の書き方が次の場合で考えてください。
 1、領収金額 ¥31,290.-(内訳の記入なし)
 2、領収金額 ¥31,290.-(「内消費税等1,490円」と記入)
 3、領収金額 ¥31,290.-(「税抜価額29,800円」と記入)

 書類上で、税抜き価額と消費税とが区別されていないときは、その金額(31,290円)で収入印紙を貼るかどうかを判断します。一方、税抜き価額と消費税とが区別できるときは、税抜き価額で判断することになります。
 したがって、上記の1は200円の収入印紙が必要、2と3は不要ということになります。このように、実質的に全く同じ領収書でありながら、領収書の記入の仕方によって印紙税の金額が変わってしまうというのは釈然としない方も多いと思います。印紙税法をわかりにくくしている原因の一つでしょう。

 また、発注元から注文書が送付され、それに対する注文請書を交付する場合があります。この注文請書は、押印がなくても一般的に契約書とみなされ、印紙税の対象になります。
 ところが、同じ内容を電子メールで送信する場合には、電子メールは電子データであり文書ではないということから、印紙税の課税対象から外れることになります。FAXで送信した場合も、受信側では紙で出力することが多いでしょうが、これも、コピーと同様の扱いとして印紙税はかかりません。送信用の原本を相手に交付せず社内で保存する場合には、印紙税の対象外です。

 同様に、会社設立の際には、紙での定款認証の場合は4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款という電磁的記録に電子署名を付した場合には収入印紙が不要となります。

 平成17年3月15日付の国会答弁書において、「印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であるところ、電磁的記録については、一般にその改ざん及びその改ざんの痕跡の消去が文書に比べ容易なことが多いという特性を有しており、現時点においては、電磁的記録が一律に文書と同等程度に法律関係の安定化に寄与し得る状況にあるとは考えていない。」と説明しているが、民間企業においては,役所ほどには紙の文書にこだわっていないという現実をどう見るのでしょうか。

 EDIと呼ばれるシステムは、取引企業などがコンピュータをネットワークで繋ぎ、伝票や文書を自動的に電子データで交換する仕組みです。これを利用すれば、企業間の受発注などの一連の取引が全てペーパーレスで行われます。ここには、印紙税法に規定される課税文書は存在の余地がありません。取引業者に強制力を行使しやすい大企業ではEDIが当然のごとく取り入れられています。このことは、御存知の方も多いでしょう。EDIシステムの導入の難しい中小、零細企業は、印紙税の分野では完全に取り残されてしまっています。

 電子データも紙による文書も、その背後にある経済的利益という点では同じであるにもかかわらず、紙の文書だけが印紙税の課税対象というのは先の国会答弁書における説明に合理性がなく、私には理解できません。印紙税法は現代の電子化の時代においては、もはや賞味期限の切れた時代遅れの法律であり、その役目は終わったと見るべきでしょう。


年末調整をどう考えますか?

 年末調整って、会社員の個人情報を会社に公開しているわけです。このままでいいのかなって考えてしまいます。

 サラリーマンにとって会社で年末調整をしてくれたら所得税や住民税の確定申告をしなくていいから便利ですが、反面、税について深く考えない国民を大量生産しているともいえますね。

 よく考えると、年末調整というのは問題の多い制度です。

 第一に、国際的に見たら非常識な制度なんです。日本のように年末調整が確定申告の代わりとなって、大半のサラリーマンは確定申告をしないで済んでしまうという制度を採用している国がないのです。以下の問題点が存在することを考えれば年末調整制度を採用しないのが当然といえます。まさに、日本の常識は世界の非常識です。否応なく国際化が進む中、この制度を維持するのは難しくなるのではないかと思います。

 第二に、毎年会社に提出する扶養控除等申告書など年末調整関係書類には究極の個人情報といえるものが満載です。家族の氏名や生年月日、生命保険料の支払金額などは序の口で、家族の収入状況、家族に障害者がいる場合には障害の程度、寡婦の判定に当たっては死別か離婚かというところまでの情報が必要です。これらの情報を会社(事務担当者)に提示しなければ年末調整事務はできません。
 当事者にとって、これは大変なことです。

 第三に、師走のあわただしい時期に、会社に年末調整事務を強制しながら国は感謝すらしません。法律で給料の支払者に年末調整を義務付けているのだから当然行うべきものというのが国税当局の姿勢です。扶養控除等申告書などの受け付け、内容のチェック、さらには所得税確定申告と同様の税額計算といった、国や納税者本人が行うべき仕事を強要するわけですから、会社に対して事務手数料を支払うべきではありませんか?
 無料で年末調整事務をさせるということは、会社が労働力で税を負担していることにほかなりません。租庸調の内の「庸」ですね。経団連をはじめとする事業者団体がこのことについてなぜ声高に叫ばないのか私は不思議に思います。何か裏取引があるのかと勘ぐりたくなります。

 以上の理由から、私は源泉徴収制度は残すとしても、年末調整制度は廃止すべきだと思うのです。その結果、サラリーマンは確定申告をする手数がかかることになりますが、税について知る機会が増えるのは良いことでしょう。

皆さんはどう考えますか?


事業所税がもたらす地方都市の空洞化

 事業所税を御存知でしょうか? なじみが薄く、意外とご存知の方が少ない税です。

 事業所税は、都市環境の整備事業に要する費用を確保するため1975年に導入された目的税で、人口30万人以上の都市に所在する事業所に課税される地方税(市町村税)です。

 事業所税の税額は資産割(建物1平米当たり600円)と従業者割(給与総額の0.25%)の合計額です。これには以下の免税点が設けられており、免税点以下の規模の事業所には事業所税の課税がありません。
   免税点・・・・・資産割 1,000平米 従業者割 100人

 従業者300人(年間給与は1人平均500万円)、5,000平米の工場を例にとると以下の税額です。
   資産割   5,000平米×600円        =3,000,000円
   従業者割 300人×5,000,000円×0.25% =3,750,000円
   1年間の納税額  資産割+従業者割   =6,750,000円
 これが、人口30万人未満の市町村に所在する事業所には無縁の税です。

 事業所税の特長とその効果を箇条書きにします。(一部、上記と重複します。)
1、 人口30万人以上の都市等について、地方税法により事業所税を課税するものとされている。
2、 事業所税は都市の税収入となるが、その60%の金額が地方交付税から削減される。すなわち、事業所税の6割は国税として徴収したのと同様の効果がある。
3、 市町村の条例により事業所税を課税しないことができるが、事業所税を課税した場合と同額の地方交付税が削減されることによって、間接的に課税を強制している。
4、 企業にとっては恒常的な税負担となるため、近隣の事業所税の課税されない市町村への工場等の移転を促す効果がある。
5、 その結果、地方の中核都市では大規模工場の周辺中小都市への移転が進み、産業の空洞化が起きている。

 事業所税とは不思議な税金ですね。地方税でありながら、地方の裁量権を実質上奪うものであり、しかも地方の増収は4割に過ぎず、それも「都市環境の整備事業に要する費用の確保」という使途を限定した財源です。国の財政負担を軽減する効果は大きいが、地方のメリットが少ない(デメリットが大きい)税であることがわかります。地方分権とはかけ離れた、地方税とは名ばかりの地方都市を苦しめる税であるといえます。

 市町村合併により人口が30万人以上となる都市にとって、事業所税は深刻な問題です。「企業進出の障害や、企業の撤退・縮小・廃業にもつながり、その結果雇用が減少する。財政シミュレーションでの事業所税による増収どころではなくなるのではないか。」と真剣に議論している様子が下記のレポートでも伺えます。
 福島市・川俣町・飯野町合併協議会住民懇談会 実施報告書
 上記報告書が開けないときはこちら

 また、「地域の中核都市への産業集積は望ましいものであり、抑制されるべきではない」との観点から、政策研究大学院大学の中瀬雅夫先生の論文が公開されています。
 地方中核都市への産業集積に対する事業所税の影響に関する経済分析
 上記論文が開けないときはこちら


歳入庁設置の効果

 民主党の政権公約(マニフェスト)に掲げられていたものの一つです。政府の平成22年度税制改正大綱にも掲げられている項目です。

 歳入庁を創設した場合の効果を考えてみます。

 民主党のウェブサイトで述べられている「効果」は次の3点です。

(1)税と保険料を一体的に徴収し、未納・未加入をなくす。
(2)所得の把握を確実に行うために、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する。
(3)国税庁のもつ所得情報やノウハウを活用して適正な徴収と記録管理を実現する。
(以上、民主党「政策集INDEX2009」より引用)

 社会保険料を滞納している会社は税金も滞納していることが多く見うけられますから、一括して集金(徴収)する効果は大きいと思います。また、社会保険事務所では会社の利益状況を把握することはできませんが、歳入庁の設置により税務の情報を入手できますから、納付率や加入率の向上につながることは容易に予測できます。

 また、民主党が触れていないことに「在職老齢年金の支給停止」の問題があるのではないかと思います。

 60歳以上70歳未満の厚生年金や共済年金の被保険者については、給料(標準報酬月額)と年金月額の合計額が一定額以上の場合に年金の一部または全部の支給が停止されます。これを「在職老齢年金の支給停止」といいます。

 ある程度以上の収入がある人は、年金が減らされてもしかたがないと思いますが、これには大きな問題があります。それは、年金の支給が停止されるのは厚生年金や共済年金の被保険者に限られることです。被保険者とは、現役のサラリーマンで年金保険料を負担している人のことです。給料以外の所得、たとえば家賃収入や株売買による所得があっても年金の支給が停止されないのです。働いて得た給料がある人は支給停止されて他の所得がある人については停止されないことに釈然としないものがあります。私は公正な制度ではないと思っています。

 社会保険庁では、厚生年金被保険者の給与収入以外の他の所得は把握できませんから現状ではこれ以上のこと不可能なのです。

 歳入庁を設置すれば、税務に関する情報も把握できますから、全所得について公平に年金を支給停止することが簡単にできますね。


更正の請求と修正申告

 更正の請求と修正申告どちらも、計算誤りや申告の内容に誤りがあったときの手続きです。この手続きによって減少するときは更正の請求、納める税額が増えるときは修正申告です。

 以下は、国税庁のサイトにあった更正の請求と修正申告についての説明です。
 「確定申告書を提出した後に、計算誤りや申告の内容に誤りがあることに気付いた場合、税額を多く申告していた時は「更正の請求」を、税額を少なく申告していた時は「修正申告」の手続を行うことによって訂正をすることができます。」

 修正申告は自主申告、更正の請求は税務署長に更正をするよう請求するということで、手続きの意味は全く異なります。修正申告は納税者自身が行うものに対して、更正は税務署長が行う手続きです。過大申告をしたときは、納税者が自主的に訂正する機会がないということです。

 さらに、手続きの可能な期間は、修正申告が自らの意思で修正をするのなら特に期限がない(時効は通常5年とされる)のに対して、更正の請求は1年とここでも大きく異なります。同じ計算誤りでも、過大申告の場合には訂正の機会を1年で打ち切り、過少申告の場合には長期間訂正の機会を与えられているわけです。

 以下は、平成13年の国会答弁書の記載の一部です。少々長くなりますが引用します。
 「更正の請求をすることができる期間は、申告納税方式による国税においては法定申告期限内に適正な納税申告書が提出されることが要請され更正の請求はあくまでもその例外を認める制度であること、法律関係の早期安定や税務行政の能率的な運営に配慮する必要があること及び納税者が自ら誤りを発見するのは、通常、次の申告時期が到来するまでの間であることを総合的に勘案して定められているものであり、合理的なものであることから、これを延長することは適当ではないと考えている。」

 法律関係の早期安定や税務行政の能率的な運営に配慮という点を考慮して1年という期限で妥当であるということです。では、修正申告はなぜ5年か。納めすぎた税金を返すのは1年を限度とするが、納め足りない税金の時効は5年と、あまりにも税を徴収する側の論理が先行していないかと思います。

 更正の請求という制度を廃止して、税が増加するときも減少するときも、どちらも修正申告という納税者自身で訂正できる方法にすべきと私は思っています。皆さんはどうお考えでしょうか?
 
※ 平成23 年12 月以後の期限の国税について、更正請求の期間が5年に延長されました。