減価償却

●減価償却とは
●減価償却資産
●絵画は減価償却できるか
●減価償却の方法
●定率法と定額法、どちらが得か
●減価償却資産の耐用年数と残存価額
●一括償却資産
●特別償却
●準備金方式による特別償却
●特別償却準備金の翌年度以後の処理
●特別償却と税額控除の有利不利

減価償却とは
 建物や機械、車両、備品などの固定資産は長期間使用でき、使用または時間の経過によって次第に価値が減少します。そこで、購入したとき一時に費用(損金)としないで、使用できると見込まれる期間で徐々に費用とします。数千円で購入できる電卓など、金額のわずかなものまで減価償却の対象とすると損益計算への影響は少なく煩雑になるばかりですから、原則として一品10万円未満のものは取得時に費用とすることが認められます。一品というのは、通常の取引き、使用状況から見た1単位であり、カメラとレンズはセットで一単位となります。

 土地などは固定資産ではありますが、減価償却の対象としていません。なぜならば使用または時間の経過によって価値が減少しないからです。

 法人税法では「内国法人の減価償却資産につきその償却費として各事業年度の損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、その内国法人が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額とする。」と規定されています。

 会社の決算書上、償却費として計上した金額が税法上の限度額以下であれば会社の計上額を損金とし、逆に会社の計上額が税法上の限度額を超えていれば税法の限度額を損金とすることになります。
減価償却資産
 減価償却資産を法人税法では、「建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。」(法人税法第2条第24号)と定め、政令の定めは次の通りです。

 法人税法第2条第24号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品etc

 実務上、次の区分は間違いやすいものです、

機械置械と器具備品
 機械装置は工場などで使われる生産設備をいい、事務機器や医療機器はいかに高額でも区分上は機械装置としないで器具備品とします。

車両運搬具と機械装置
 クレーン車やパワーショベルなどの建設機械で、道路交通法上は自動車として道路を通行可能なものでも、現場で作業することが主目的で、人や荷物を運搬する目的ではないものは機械装置となります。

建物と構築物
 建物とは、土地に定着して建設された工作物で壁、屋根を有し、住居、工場、貯蔵等の用途に供される物をいいます。カーポートの例では、屋根だけあって壁がない物は構築物、壁で囲まれたものは建物という区分になります。
絵画は減価償却できるか
 減価償却資産とは使用または時間の経過によって次第に価値が減少するものです。「書画、骨董」は減価償却資産に該当するかということも実務上問題になります。絵画などは時の経過により価値が減少するものではなく、むしろ、価値が増加することが多いでしょう。その意味から、これらは減価償却資産に該当しないということになります。

 しかし、美術品ならすべて書画骨董としての価値があるわけではありません。税務上は、次に該当するものが非減価償却資産としています。
1、古美術品、古文書、出土品、遺物等の歴史的価値を有し、代替性のないもの
2、美術年鑑等に登載されている作者の制作する書画等
(注)書画骨董に該当するかどうかが明らかではない美術品等で、その取得価額が1点20万円(絵画については、号2万円)未満のものについては減価償却資産として取り扱いことができるものとされています。(法人税法基本通達7-1-1)

 逆説的には、複製品や無名作家の制作した絵画などは減価償却資産に該当することになります。よほどの銘品でなければ減価償却資産になると考えて良いでしょう。

 私は書画骨董には全く疎く、相続税の相談で掛け軸とか壷などがあると内心はどうしたらよいかと心配したものでした。テレビの○○鑑定団を見て、骨董店で買ったなど出所が明らかでない物のほとんどが本物ではないということを知って以来、自信を持って個別評価しないで家具等一式に含めています。

 注意すべきは、1号、2号という小品の絵画で号当たり2万円以上の絵画の場合は、たとえ10万円未満であっても一時の損金にできないことです。もともと、10万円基準は減価償却資産について適用されるもので、非減価償却資産には適用されないからです。

 あるサイトに、ペルシャ絨毯は減価償却できるか? という質問がありました。あなたならどう答えますか?

 そのペルシャ絨毯がどんなものか、によって答えは分かれます。古美術品として歴史的価値を有し、他に代替性のないものであれば非減価償却資産、そうでなければ減価償却資産ですね。
 ただし、倉庫に保管しているような場合には減価償却資産に該当しません。その資産を使用して初めて減価償却資産とか少額減価償却資産となることを忘れないで下さい。
減価償却の方法
 減価償却の方法には、一般的なものとして定率法と定額法があります。特殊な償却方法に生産高比例法、取替法などがあります。ここでは定率法と定額法について説明します。

種類ごとの償却方法
建物 定額法(平成10年4月より改訂、改訂以前からある資産で定率法を選択しているときは定率法でもよい。)
鉱業用減価償却資産 定率法、定額法、生産高比例法の選択
 建物以外の有形減価償却資産 定率法と定額法の選択
 鉱業権を除く無形固定資産 定額法

(1) 定率法
<計算式> 定率法の償却額(年間)=前期末帳簿残高×定率法の償却率
帳簿価額に一定率を掛けて償却額を計算します。帳簿価額が年々減少するので償却額も、最初が多くて次第に減少します。

(2) 定額法
<計算式> 定額法の償却額(年間)=取得価額×定額法の償却率
 毎期一定額を償却する方法です。取得価額は購入価額そのものですから、償却額は耐用年数の期間は、毎期同額となります。
定率法と定額法、どちらが得か
 定率法と定額法はどちらを選択しても、耐用期間を通算すれば償却費総額は同じです。資金繰りの面では、設備資金を返済しているとき苦しく、返済が終了すれば楽になる傾向にあります。返済金については資金の流出はあるが費用とならない(費用となるのは利息だけ)ので資金状況に比較して利益が多く計上され税金や配当の支払に無理が生じる。だから経営者として、は返済期間中の費用をできるだけ多くしたい(利益を少なくしたい)と考えるわけです。

 損か得かとは次元が違うけど、私は以上の理由から定率法をお勧めしています。
減価償却資産の耐用年数と残存価額
 耐用年数とは「建物などの固定資産の利用可能年数」のことです。耐用年数省令で細かく定め、実務上はこれに従っています。これを法定耐用年数といいます。

 法定耐用年数と現実の耐用年数は、長すぎるものや短すぎるものと、ときに現実との乖離があります。たとえば、自家用乗用車の場合の法定耐用年数は6年ですが、現実には10年以上利用でき、産業用機械装置の法定耐用年数の多くは10年前後ですが、4~5年で生産中止などりより利用できなくスクラップ同然ということもあります。

 残存価額は、文字通り使用不可能となったとき残り存在するもの、すなわちスクラップとしての処分価額をいいます。近年スクラップ価額は低下の一途をたどり、車両でも機械でも処理費用を支払わなければ引き取ってくれないのが現状です。このような状況下では、理論的には残存価額はマイナスとなるはずです。ところが、税法では残存価額を取得価額の1割(帳簿価額が一割に達した後も5%まで償却を認めているが)と定めており、実務上はそれに従わざるを得ません。

 18年12月に発表があった自民党税調の税制改正大綱によると、この不合理さを解決する方向のようです。やっと正常な状態に向かうことになりそうです。
一括償却資産
 少額減価償却資産の取り扱いが平成10年に改訂され、それまでの1単位20万円未満から10万円未満に引き下げられました。これに伴い、10万円以上20万円未満の減価償却資産は、事業年度ごと一括して3年で償却する方法を適用できることになりました。もちろん、通常の償却も可能で、どちらを選択するかは各法人の任意です。

 「事業年度ごと一括して償却」するということは、減価償却資産を個別に管理せず、その年度に取得した資産をまとめて償却することです。

 次に具体例で示します。(事業年度は平成12年4月1日から翌年3月31日とする)
 1、 5月 事務机とイス    3単位 360,000円
 2、 8月 工 具      1単位 170,000円
 3、11月  書 庫      1単位 190,000円
 4、 2月 会議テーブルとイス 1単位 240,000円
以上で、一括償却資産の対象となるのは、1、2、3で合計720,000円です。本年度の償却可能額は次の通りです。
720,000×1/3=240,000円(2年目、3年目も同じ)

 4の会議テーブルとイスの償却可能額は以下のようになります。(耐用年数8年、定率法、償却率0.250として計算します。)
 240,000×0.250×2/12=10,000円

 以上のように一括償却の場合には、月割計算をしないで年3分の1を償却、残存価額がないという点が通常の償却計算と異なります。
特別償却
 特別償却は政策的なもので、租税特別措置法において適用期間を定めて設けている。いくつかの特別償却について説明します。以下の規定はいずれも租税特別措置法に規定し、青色申告法人にのみ適用されます。

1)情報通信機器等を取得した場合の特別償却
コンピュータなどの情報通信機器やソフトウエアで1年度に140万円以上(注)のものを取得したときに、普通償却費のほか取得価額の50%を償却できる。
(注)資本金3億円を超えるの法人は600万円以上

2)中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却
 1台160万円以上の機械装置、120万円以上の器具備品を取得したとき、取得価額の30%を償却できる。。

3)特定設備等の特別償却
 公害防止に資する機械等を取得したとき、種類により取得価額の19%から5%を償却できる。

4)高度技術産業用設備の特別償却
 高度技術工業集積地域内で新増設した機械装置、工場、研究用設備を取得したとき、取得価額の14%または7%を償却できる。

5)障害者を雇用する場合の機械等の割増償却
 バス等で乗降補助装置を有するものを取得した場合などに適用される。

 上記の内、機械等の種類と金額、事業の種類に限定がありますが、詳しく触れませんので、実際に適用されるときは税務署に尋ねるなど確認して下さい。

 また、ここで触れなかった特別償却も数多くあることにもご注意下さい。
準備金方式による特別償却
 特別償却の経理は、通常は貸借対照表上の固定資産の価額を減額するとともに、損益計算書に特別償却費を計上します。しかしながら、特別償却は、景気浮揚策や環境政策といった政策的に認めているもので、企業の損益計算にそれを反映させると、適正な期間損益計算を歪めるものとの指摘もあります。

 そこで、特別償却費を固定資産価額から直接減額する方法(企業の費用又は損失として損益計算書に計上)に代えて、準備金方式を認めています。

 準備金方式は、特別償却費を損益計算書に計上せず、利益処分により特別償却準備金を積み立てることにより、法人税法上損金算入を認めるものです。
特別償却準備金の翌年度以後の処理
 特別償却準備金を積み立てたときは、その翌年以後7年にわたって準備金を取り崩し、益金の額に算入します。つまり、準備金を積み立てた年度に損金算入した特別償却額を7年で取り戻すことになります。一方、減価償却は通常通り行うので、耐用年数を通算すれば、原則的な特別償却をした場合や特別償却をしなかった場合と同額の法人税の課税所得となるわけです。

 特別償却の対象とした資産を売却したときに準備金の残高があるときでも、準備金を一時に取り崩すことなく予定通り7年間で取り崩し、益金に算入することになります。特別償却をした資産と準備金の間には対応関係は全くないのです。
特別償却と税額控除の有利不利
 電子機器利用設備を取得した場合には、特別償却と税額控除のいずれかを選択適用できます。「どちらを選択した方が有利か」について、考えてみましょう。

◎税額控除とは
 資本金3千万円以下の青色申告法人が上記(1)の電子機器利用設備を取得した場合には、次のいずれか少ない金額を法人税額から控除できます。
 (1)取得価額の7%
 (2)法人税額の20%
 (1)のうち、当年度の税額から控除できなかった部分は、1年間に限り繰り越して翌年度の法人税額から控除できます。

では、どちらが有利かということを、次の例で示します。
 前提条件:
  法人所得金額 5,000万円(対象設備の償却前、2年目以後も同じとする)
  法人税住民税の税率35.2%、事業税の実効税率8.7%
  特別償却対象資産2,000万円、定率法償却率0.319、特別償却率30%
  住民税も含めた税額控除の割合を8.2% とします。

(以下の計算は旧定率法で計算しています。新定率法でも傾向としては同様です)
 特別償却の場合
1年目 普通償却費 20,000,000×0.319=6,380,000
特別償却費 20,000,000×0.3 =6,000,000 計12,380,000円
償却後所得金額 50,000,000-12,380,000=37,620,000円
法人税住民税 37,620,000×0.352=13,242,200円
事業税 37,620,000×0.087=3,272,900円
合計税額 13,242,200+3,272,900=16,515,100円
      (税額段階では100円未満を切り捨てています)
2年目 普通償却費 (20,000,000-12,380,000)×0.319=2,430,780
償却後所得金額 50,000,000-2,430,780=47,569,000
合計税額(計算過程省略)      20,882,800円
3年目 合計税額(計算過程省略)      21,223,200円
4年目 合計税額(計算過程省略)      21,455,100円
5年目 合計税額(計算過程省略)      21,612,900円
5年間の税額合計 (計算式省略)      101,689,100円

 税額控除の場合
1年目 普通償却費 20,000,000×0.319=6,380,000
償却後所得金額 50,000,000-6,380,000=43,620,000円
法人税住民税 43,620,000×0.352=15,354,200円
税額控除額 10,000,000 ×8.2%=1,640,000円
差引法人税住民税額 15,354,200-1,640,000=13,714,200円
事業税 43,620,000×0.087=3,794,900円
合計税額 13,714,200+3,794,900= 17,509,100円
2年目 合計税額(計算過程省略)      20,042,600円
3年目 合計税額(計算過程省略)      20,651,000円
4年目 合計税額(計算過程省略)      21,065,400円
5年目 合計税額(計算過程省略)      21,347,600円
5年間の税額合計 (計算式省略)      101,615,700円
(6年目以降もこの傾向が続くので、差額はさらに大きくなる)

数字もこれだけ並ぶと読むのもいやになりますね。そんなときは読み飛ばしてそれぞれの5年間の税額合計金額だけをご覧下さい。

 1年目は特別償却を選んだ場合の方が99万円ほど少なくなりましたが、2年目以降の償却額が変わってくるので、5年を通算すると税額控除を選択した場合の方が有利ということがおわかりいただけたと思います。

 特別償却は、将来の償却費を先取りしたにすぎません。特別償却した分だけ翌年度以後の償却額が減少し、耐用年数を通算すれば特別償却しないで普通償却だけの場合と同じになります。一方、特別控除の場合には普通の償却はできますから、数年を通算すれば特別償却の場合と同じだけの償却ができ、通算の法人税額は特別控除したときの方が少なくなります。

 だけど、「税額控除が有利」という結論をだすのは早すぎます。上記のように税額控除前の法人税額の20%という基準もあります。当年度に控除しきれない部分は1年だけ繰り越しができますが、翌年も業績が悪く繰り越した金額を控除できない場合は打ち切りとなります。

 でも、業績の悪いときに特別償却をして償却費を先取りする必要もないですね。
 あなたならどちらを選びますか?