相続税・贈与税

贈与税っていくらからかかるの?

 贈与税は年間110万円の基礎控除があるから、110万円を超える財産をもらった人が課税されます。逆に年間110万円以下の財産をもらった人は贈与税の申告をする必要もないし、税金もかからないことになります。

 余談ですが、アメリカでは贈与した人に課税されるそうです。日本に住んでいる親からアメリカに住んでいる子どもに贈与したときはどちらにも贈与税がかからないと以前読んだ雑誌に書いてありましたが現在もそうでしょうか?
 参考:米国の遺産税と日本の相続税・贈与税
 
 相続時精算課税というものもあります。これについては国税庁のサイトをご覧ください。

毎年110万円の財産を10年間にわたってもらった場合にも贈与税はかからないの?

 ちょっと堅い話になりますが、贈与とは民法上の契約によって成立します。つまり財産を一方があげます(贈与者)、片方で貰います(受贈者)と両当事者の合意によって契約が成立(諾成契約)するわけです。贈与税の実務上よく問題になるのが「いつ贈与契約(合意)が成立したか」という点です。毎年110万円の財産を10年間にわたってもらった場合は、どのように贈与の合意がなされたか、がポイントになります。
 計画的に10年間にわたって年110万円を贈与するという場合には、契約が成立したのは初年度であって、1,100万円を10年分割で贈与したことになり(これを連年贈与契約という)、贈与税がかかることになります。

生前贈与の相続税対策効果は?

 相続税が多額になると予想される場合、まず考えるのが生前贈与です。贈与すれば遺産はそれだけ減少しますので相続税が安くなるわけです。生前贈与すれば贈与税の対象となりますから、贈与税もかからないようにとすれば贈与税の基礎控除(年110万円)の範囲内でとすると10年かかっても一人当たり1,100万円しか贈与できません。(相続税対策で生前贈与を考える人にとっては、10年で1,100万円というのはわずかな金額なんです。うらやましいですね。)
 息の長い相続税対策ですが、リスクも少なく効果は確実です。

 ただし、ここで以下の注意が必要です。
(1)実際に贈与すること
 預金を子供名義にして贈与したつもりでも、通帳や印鑑を親が管理していたらそれは単なる名義借であって贈与したことになりません。ましてや子供がその自分名義の預金があることを知らない状態では言い訳もできません。相続税の調査ではその辺りを徹底的に調べます。
(2)贈与を示す書類を残しておく
 贈与税や相続税の調査で問題となるのが「いつ贈与したか」という点です。ある年110万円、その翌年に110万円と贈与してもそれを証明できるものがなければ単なる口頭による主張にすぎません。同じ年の贈与だとすれば贈与税がかかってきます。百戦錬磨の税務署員を口先でごまかせると思ったら間違いです。
(3)贈与は「契約」であることを認識する
 意志表示ができないような子どもには贈与しない。また、できるだけ贈与契約書を作っておくこと。
(4)贈与税の申告をする
 年間110万円を超えて贈与したときは贈与税の申告をすること。無申告では「贈与の認識がなかった」と言われても仕方がありませんね。
(5)「連年贈与契約」に注意する
 別の項で記載した「連年贈与契約」に該当しないように注意する。

養子縁組をしたら相続税が安くなるの?

 養子は法律上実子と同じ権利義務があります。相続の権利、扶養の義務などです。
 相続税は遺産総額から基礎控除額を差し引いた残額が課税対象となります。この「基礎控除」は[3千万円+6百万円×相続人の数]という計算をします。したがって遺産総額が同じならば相続人数が多いほど基礎控除が多くなり、相続税が安くなることになります。そんな理由から孫、曾孫など15人も養子を作った猛者がいたそうです。

 そこで目に余る節税策を封じようと、相続税の計算の上では、原則として1人だけを相続人にカウントすることになりました。大勢の養子がいたとしても相続税の節税効果は少なくなりました。例外についてはこちらをご覧ください。

 しかし、民法上は養子が何人いたとしても実子と同じ権利義務を有することは変わりありませんから、相続権もあります。相続税は最高税率50%の累進課税方式ですから、どんな財産家でも3代相続すれば財産がなくなるといわれます。孫を養子にした場合、親から子、子から孫という一般の相続形態からすれば、一代相続を跳ばすことができるという効果はあります。現在でも相続税対策としての養子縁組は健在といえるでしょう。

相続税っていくらからかかるの?

 相続税は人が亡くなってその人の財産を配偶者や子などの相続人が相続したときにかかる税金です。相続税には基礎控除があってそれ以下なら税金がかかりません。基礎控除は3千万円と相続人1人につき6百万円の合計額です。相続人が配偶者と子2人の場合には基礎控除は4千8百万円ということになります。

相続税や贈与税では財産の価額をどのように計算するの?

 相続税と贈与税は相続税法という一つの法律で定められています。贈与税法というものはありません。そんなところからでしょうか、財産の評価は相続税と贈与税は同じ計算をします。財産の評価は大変複雑でここですべてを説明することはできませんが、基本的な部分だけ説明します。
 まず、現金や銀行預金はそのものズバリの金額です。ただし定期預金は利息も付けて計算します。株式など上場されている有価証券は原則として贈与を受けた時や死亡の時の時価で計算します。土地は市街地は路線価方式といって、面している道路の価額によって計算します。市街地以外の土地は倍率方式といって固定資産税の評価額に定められた倍率(地域のよって細かく定められている)を掛けて計算します。家屋は原則として固定資産税評価額そのものです。

 以上、ずいぶんアバウトな説明で正確ではありませんから当事者になった人はきちんと調べて下さい。「原則として」が何度かでましたが、これは「例外がある」という意味です。「例外のない法律はない」といわれますよね。

大学生の子どもへの仕送りに贈与税がかかるか?

 大学生も自宅以外からの通学となるとずいぶん多額の費用がかかるものです。聞くところによると、学費、家賃、生活費などをあわせて年間4百万円前後もかかっているようです。これに贈与税がかかると大変です。でも安心して下さい。このような家族の生活費、学費については贈与税の課税はされません。そのほか、嫁入り道具なども課税されないことになっています。親子間で生活費や教育費を負担することは扶養義務の履行であって贈与ではないとされているからです。

新築した住宅の名義は?

 住宅を新築したりマンションを購入する場合、夫婦共有名義にする方が多くなっています。ここで注意していただきたいのは共有割合に応じて資金を出しているかどうかということです。財産は夫婦共同して築いたものという意識が浸透して、専業主婦の方も夫の財産も半分は自分に権利があると思って住宅の名義を共有にするケースが見受けられます。贈与税の取り扱いでは今のところこれを認めていませんので、贈与税がかかってしまいます。あくまでも資金を出す割合に応じた共有持分にして下さい。

 住宅を手に入れた場合、数ヶ月後に税務署から「誰からいくらで購入したか、代金はいつどのように支払ったか」といった内容の「おたずね」が送られてきます。この「おたずね」のねらいは2つあって、1つは親や夫から贈与を受けていないかの下調べです。もう1つは住宅会社や土地を譲渡した人の収入が正しく申告されているかどうかを調べるための資料とする意味があります。「おたずね」が送られてきてから、あわてても後の祭りですから登記の際キチンとした持分にすることが大切です。

アパート建設が相続税対策になるか?

 住宅会社が相続税対策としてアパート建設を勧めています。本当に相続税対策になりますか、という相談も多くあります。
 アパートなどの賃貸家屋やその敷地は相続税の評価をする際、借家人の権利ともいう部分を差し引きます。都会ではアパートを建設したため相続税評価額が4割以下に下がったケースがあります。一方で建築資金の借入金は残高の全額が差し引かれますので、実際に相続税対策になるわけです。

 ただし、大規模なアパートは収入も多いが借入金の返済や固定資産税など支出も多く手許に残る現金はそれほどにはありません。分譲マンションは毎月修繕積立金を出し合っています。アパートのオーナーは修繕の際は自分で支出しなければなりませんから、手許に残った現金も修繕積立をしていなければ修繕費も借り入れしなければならない羽目に陥ります。また、古くなって入居率が落ちたときも借入金返済は残ります。何分にも返済期間は30年とか35年程度ですから。私の回りにも返済できなくなって担保処分された人もいます。
 これではなんのためのアパート建設かわかりませんね。

農地を持っていると相続税が安くなるか?

 農業相続人の優遇制度があります。相続人が農業経営を継続することを条件として相続税の一部を猶予し、原則として猶予を受けた者が死亡したときには猶予した相続税が免除されるという制度です。ただし、生前に優遇された農地を売ったり農地以外の目的に使用した場合は猶予された税金を利息を付けて支払わなければなりません。
 詳細については、国税庁のタックスアンサーをご覧下さい。

 条件は厳しいのですが、農地の全部についてこの優遇制度を使う必要がなく無理のない範囲でこの制度を使えばいいので、特に市街地農地のように評価額が高い地域では、十分検討に値する制度です。

相続税の計算の際、借入金はどうなるの?

続税は次のように計算されます。
 借入金は下記のように債務控除の対象となり相続財産から差し引かれます。

第一次計算 相続財産の価額 - 債務・葬式費用 = 課税財産の価額
第二次計算 課税財産の価額を法定相続分で分割したものとして計算した各相続人の相続税額の合計額 = 相続税の総額
第三次計算 相続税の総額を実際の財産取得割合で按分した相続税額 - 税額控除 = 各相続人の納付すべき相続税額

 

葬式の費用は相続税の計算上、相続財産から差し引かれますか?

 葬式費用は債務控除として相続財産から差し引かれます。ただし、一般に葬式費用といわれるものの内、香典返しの費用や墓石、初三日等の法要の費用は対象となりません。
 香典が課税されませんので、そのお返しの費用も債務控除の対象とならないのは道理といえましょうか。