その他の収益

●損害賠償金の益金算入時期
●雇用保険法等に基づく助成金の益金算入時期
●敷金、保証金の収入
 
損害賠償金の益金算入時期
 自動車事故や近隣で行われる工事によって会社の建物や商品などの財産に損害が生じ、加害者から損害賠償金を受け取ることがあります。今回は、そんな場合の収入計上時期を考えてみます。

 損害賠償金を受け取る場合に、いつの時点で益金に算入すべきかについては、次の考え方があるでしょう。
(1) 損害発生と同時の収益計上。
(2) 示談の成立等によって損害賠償金の確定した年度に収益計上。
(3) 現実に損害賠償金を収入した年度に収益計上
 (1)の場合には、損失計上時期と損害賠償金収入の時期が一致しますが、(2)と(3)の場合には、損失計上時期と損害賠償金収入の時期が異なることがあります。

 債権確定主義が法人税法の基本的な考え方ですから、そこからは(2)の具体的に損害賠償金の額が確定した日の属する事業年度の収入ということになりましょう。しかし、示談が成立しても加害者の支払能力などの事情によっても示談の条件通り支払われるとは限りません。そこで、通達でも以下の通り、(2)を原則としながらも(3)の損害賠償金を収入した事業年度の収益計上も認めています。

 他の者から支払を受ける損害賠償金(債務の履行遅滞による損害金を含む。)の額は、その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には、これを認める。(法人税法基本通達2-1-43)

 一方、会社が受けた損害について損失として損金算入すべき時期については、下記通達の通り損害発生時の損金算入を認めています。すなわち、損失の計上と損害賠償金の収益計上時期とは切り離して考えています。

 当該損害賠償金の請求の基因となった損害に係る損失の額は、保険金又は共済金により補てんされる部分の金額を除き、その損害の発生した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(法人税法基本通達2-1-43注書)
雇用保険法等に基づく助成金の益金算入時期
 雇用の維持・促進のため特定求職者雇用開発助成金など各種助成金の制度があることはご存じの通りです。多くの助成金制度がありますから、詳しくは厚生労働省のページをご覧ください。

 税務においては、これらの助成金をどの年度の収益とすべきか、が問題となります。収益の計上時期として考えられるものは以下のものでしょう。
(1) 助成金の原因となる事実の発生時期
(2) 助成金の申請書の受理された日
(3) 助成金の支給決定があり、金額が確定した日
(4)現実に助成金が入金した日

 法人税法の基本原則である債権確定主義からは(3)の具体的に助成金の額が確定した日の属する事業年度の収入と考えられますが、通達では次の通り、(1)の原因事実の発生をもって収益計上を義務づけているものがあります。

 法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補てんするために雇用保険法、雇用対策法、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。(法人税法基本通達2-1-42)

 一方で、次の通り(3)の助成金の支給決定があった日の収益計上とされる助成金もあります。

 法人が定年の延長、高齢者及び身体障害者の雇用等の雇用の改善を図ったこと等によりこれらの法令の規定等に基づき交付を受ける奨励金等の額については、その支給決定があった日の属する事業年度の益金の額に算入する。(法人税法基本通達2-1-36注書)

 通達では、以上のように助成金の性質により2つのカテゴリーに分けてその取り扱いを定めています。これを考えるにあたり「経費の補てん」がキーポイントになりそうです。

 雇用調整助成金、労働移動雇用安定助成金、職場適応訓練費などのように具体的な経費の補助という性質の給付金については、経費と助成金収入との期間対応関係を重視し、債権として確定しない時点で益金算入を要求しています。

 一方で、特定求職者雇用開発助成金、中小企業雇用創出人材確保助成金、介護人材確保助成金のように一定の基準を満たす場合に、たとえば1年間というように、ある期間について助成金を支給するが、その期間を経過すれば助成金の支給がなくなるもの、すなわち、具体的な経費補助といえない性質の助成金については原則的な債権確定主義の基づいて「支給決定があった日の属する事業年度の益金の額に算入する」としているのではないかと考えます。
敷金、保証金の収入
 会社が建物の賃貸借契約をして敷金や保証金を受け入れたときは、これを収益としないで"負債"として処理します。その理由は、建物を明け渡すときに敷金や保証金として預かっていたものを返還するからです。

 ところが、契約により敷金の一部を返還しないとされているときは、"負債"でない部分は収益としなければなりません。

Q 次の契約内容のときは、いつ収益を計上すべきでしょうか。
(1) 敷金として家賃の3ヶ月分を預託する。この敷金の内2ヶ月分は建物の明け渡しの時返還し、1ヶ月分は返還を要しないものとする。
(2) 敷金として家賃の3ヶ月分を預託する。この敷金は建物の明け渡しの時返還する。ただし、入居開始の日から1年以内に退去するときは1ヶ月分は返還を要しないものとする。
(3) 敷金として家賃の3ヶ月分を預託する。この敷金は建物の明け渡しの時返還する。ただし、滞納した家賃があるときは返還すべき敷金の内から家賃に充当し、残額を返還する。

答え
(1)  契約を締結し敷金を受領したときに1ヶ月分を収益に計上する。
この契約内容の場合には入居期間に関わらず、敷金の内1ヶ月分は返還を要しないからです。
(2)  1年以内に退去し、敷金の一部の返還を要しないことが確定したときに収益を計上する。
 1年を越えて入居しているときは、敷金のすべてを返還する義務があるから敷金について収益を計上しない。
(3)  敷金について収益を計上しない。退去時に滞納家賃があり、敷金を家賃に充当したときは、その部分を家賃収入として収益を計上する。

 以上は、それほど難しい判断を要するものではありませんが、意外と間違いの多いところです。この部分についての通達もありますので次に紹介します。

 資産の賃貸借契約等に基づいて保証金、敷金等として受け入れた金額であっても、当該金額のうち期間の経過その他当該賃貸借契約等の終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなる部分の金額は、その返還しないこととなった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるから留意する。(法人税法基本通達2-1-41)