農地の生前一括贈与

 農業者年金基金法の経営移譲年金を受給するために、農地の全部(一部ではいけない)を後継者に贈与することがあります。この場合には、その後継者が農業を営んでいる限り贈与税の納税は猶予されます。その代わり、相続の時点で贈与を受けた農地も相続財産に組み入れて相続税を計算します。

 相続税においても納税猶予の制度がありますから、この制度を使えばかなりの節税となります。特に都市近郊の地価の高い農地の場合には大きな節税効果があります。しかも、相続税の納税猶予の場合には、一部の農地でもOKですから、ある部分は配偶者に、また、ある部分は長男に相続するといったときも納税猶予制度が使えます。

 この制度を使う場合のリスクについての話です。

 親が子である農業後継者に農地の全部を贈与しました。もちろん贈与税の納税猶予の制度を使って。

 その後、親より先に農業後継者である子が死亡しました。その相続人は子の配偶者と孫です。親には相続権がありませんね。嫁と姑の仲がよければいいんですが、そうでないことも多いこの世の中、財産がない者の弱みで親は嫁に追い出され、路頭に迷ってしまったという現実にあった話です。

 経営移譲年金は農地を贈与しなくても、農地について使用収益権(使用貸借権)を設定する方法でも受給できますからどうしても年金がほしい場合には使用収益権を設定して、相続で後継者に譲る方法を考えましょうね。