借金があると相続税が安くなるという話を聞きます。本当にそうでしょうか?
借金したお金を遣ってなくしてしまえば、確かに相続税が安くなります。その意味では正しいといえます。しかし、それは相続税対策ではないと私は考えます。普通は借金したお金を何かに運用します。その運用の仕方によって相続税が安くなることもあれば全く変わらないこともあります。そこを勘違いしないようにしましょう。
次の例で運用形態による変化を見てみましょう。
借入金の使途 | 運用後の財産評価額 | 結 果 |
---|---|---|
1億円借り入れて →定期預金にした |
(プラスの財産) 定期預金1億円 (マイナスの財産) 借入金 1億円 |
変化なし |
1億円借り入れて →宅地を買った |
(プラスの財産) 土地(宅地) 1億円×8割=8千万円 (マイナスの財産) 借入金 1億円 |
マイナス 2千万円 |
1億円借り入れて →豪華海外旅行に使った |
(プラスの財産) 0円 (マイナスの財産) 借入金 1億円 |
マイナス 1億円 |
1億円借り入れて →株を買った その株が1億2千万円になった |
(プラスの財産) 株式1億2千万円 (マイナスの財産) 借入金 1億円 |
プラス 2千万円 |
以上のように、借金をしても運用の仕方によって相続財産の評価が下がるとは限りません。逆に運用によって値上がりすれば相続財産が増える(当然に相続税も増える)ことさえあります。運用益が出ることは結構なことですが、相続税対策にはなりません。別項目でも触れていますが、借入した資金で評価の低い財産に運用すれば相続税対策になると理解してください。
また、借入金を全額返済できる預金があるとき、返済しない方が相続税が安くなると思っている方もいますが、同じ理由で返済してもしなくても相続税に変化はありません。預金の利息より借入金の利息の方が高いだけ損ということです。