交際費課税

●交際費課税
●1人あたり5,000円以下の飲食費
●交際費と会議費
●交際費と福利厚生費
●交際費と紹介手数料
●交際費:パーティ費用と祝金
●会費制のパーティ費用
●交際費と広告宣伝費
●ゴルフクラブの入会金など
●交際費と寄付金
●交際費と売上割戻し

交際費課税
 交際費課税は冗費(無駄使い)抑制の目的でスタートしました。課税が徐々に強化され、現在では冗費とはいえない部分も交際費課税の対象となっております。

 交際費は会社の規模に応じて次の金額が損金不算入、すなわち課税対象とされています。(租税特別措置法61条の4)
 (1) 資本金の1億円を超える法人・・・交際費の全額 
 (2) 資本金1億円以下の法人・・・次の合計額
    年間600万円までの金額の10%
    年間600万円を超える金額

 このような説明をすると順序が逆じゃありませんかといわれるが、この通りです。規模の大きな法人ほど損金とされる部分が小さいのです。小企業の方がやむなくお付き合いの費用を支出するだろう、という配慮でしょうか。

 税法上の交際費ということになると上記のように損金不算入扱いの部分があるので、何とか交際費以外のものにならないかと知恵を絞りますが現実には難しいものです。
1人あたり5,000円以下の飲食費
 平成18年4月から適用の新たな制度です。
 飲食のために要する費用で1人あたりの金額が5,000円以下である費用は交際費課税の対象から除かれました。無駄使いの抑制という観点からは、少額の飲食費まで課税対象としなくてもよいだろうという判断です。その意味では一歩前進と言えます。

 ただし、この飲食費からは、法人の役員若しくは従業員などに対する接待等のために支出するものは除かれます。

 なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されることになっていますのでご注意を。
(1) 飲食等の年月日
(2) 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
(3) 飲食等に参加した者の数
(4) その費用の金額並びに飲食店等の名称及び所在地(店舗がない等の理由で名称又は所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の名称、住所等)
(5) その他参考となるべき事項
交際費と会議費
 実務上問題になるものに会議費か交際費かの区別があります。

「会議に際して社内または通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を越えない飲食物等の接待に要する費用」は、交際費としないという扱いです。

「通常供与される昼食の程度」とは、会議や来客との商談、打ち合わせに際して供与する飲食代が会議費ということになります。

 打ち合わせの場所が焼鳥屋の場合には「通常会議を行う場所」ではないとして飲食等の費用は交際費になるであろうし、ホテルの会議室のように「通常会議を行う場所」を使った場合でも「昼食の程度を越えない飲食物等」の範囲を超えた宴会といえるような場合にも、やはり飲食代が交際費となることは避けられないでしょう。経営者は、打ち合わせの場所を設定するときもこのようなことを考慮して下さい。
交際費と福利厚生費
 法人税法上の交際費とは「交際費、接待費、機密費、その他の費用で、法人が得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう」と定義しています。

「その他事業に関係ある者等」とは従業員を含む法人に関係のある者すべてと考えます。従業員の慰安目的であっても「専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のため通常要する費用」以外のものは交際費課税の対象となります。

 ここでのポイントは「専ら従業員の・・・」と「通常要する費用」です。

 忘新年会の費用であっても従業員だけでなく得意先も招待する場合には「専ら従業員の・・・」ではないとして交際費課税の対象(全額が対象です。)となるでしょう。また、従業員だけの忘年会であっても、あまりに豪華なものも「通常要する費用」ではないとして、交際費課税の対象となる可能性もあります。

従業員との意志疎通を図るため、従業員に個別に会食した場合も交際費となるでしょう。裁判例では、残業手当に代えて、飲食の費用を負担したところ、これが通常の食事とはいえないとして交際費課税の対象とされたケースがあります。

 一方従業員や元従業員又はその親族などの慶弔に際して、慶弔規定等一定の基準に従って支給される結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどの費用は福利厚生費とされます。
交際費と紹介手数料
 顧客の紹介や取引の情報を受けた場合に情報提供料、紹介料などの名目で支出することがある。この場合、販売促進費たる紹介手数料に該当するか、交際費となるかも微妙なところがあります。

 取引の斡旋業者以外の者に対する、情報提供料として支払った場合でも、次の3つの要件を満たしているなどの正当な対価であると認められるときは交際費課税の対象とされません。(租税特別措置法通達62(1)の2)
 1)あらかじめ締結された契約に基づくものであること
 2)提供を受ける役務の内容が契約上具体的で、これに基づいて役務提供が行われていること
 3)価額が役務の内容に照らして相当と認められること

上記で「契約」とは、必ずしも契約書を指すわけではなく、口頭の約束でもいいが、折込広告や店頭掲示、場合によっては商談メモなどの資料を保存し後日の証拠とすべきです。また、成約金額の何パーセントというように、支払うときは金額の根拠を記した書類(支払伝票など)を作成する必要もあるでしょう。なかには、領収書さえあればいいと思っている経営者も見受けられますが、支払の内容を示す書類がより重要です。

 ドライブインの経営者が観光バスの乗務員に支払ったチップが交際費等に該当するか否かについて争われたことがある。判決では、たとえあらかじめ締結された契約に基づくものであっても、職務上当然の行為を行った者に対する謝礼は、今後も乗客を案内してくれるという期待を込めて支出するものであって、行為に対する支払でないとして交際費課税の対象とした。
交際費:パーティ費用と祝金
 社屋の完成を記念してパーティを開催することがあります。このとき、招かれた客は祝儀を持っていくのが慣習となっています。

 さあ、ここで問題です。パーティを主催する会社の正しい経理方法は次のどちらでしょうか。
 1) パーティ費用からいただいた祝儀を差し引いた金額を交際費とする。
 2) パーティ費用を交際費として、いただいた祝儀は別途雑収入とする。
 2つの違いがわかりますか? 交際費とする金額が異なりますよ。

 (1)の理由として、「会社が負担した費用は、祝儀を差し引いた金額であり、仮に祝儀を差し引く前の金額を交際費とするなら、招待客側の支出した祝儀も相手方で交際費とされるから、その部分で二重に課税されることになる。」ということであろう。

 現に、(1)を主張して、不服申し立てをしたケースがある。国税不服審判所の裁決理由は次のとおりです。
 「交際費とは、法人がその得意先等に対してした交際、接待等の行為自体に着目して、その行為のために支出する費用がこれに該当するものというべきであり、このような交際費等に対する課税をするに当たっては、当該交際、接待等の行為の対象となった相手方の課税関係のいかんを問わないものと解すべきである。」

 判決や裁決の文章はわかりにくいですね。ワープロで、この裁決文を入力するうち3回ほど文法誤りのコメントがでました。法文を入力するときも頻繁にこのコメントがでます。

 それはさておいて、簡単に言えば、取引先の接待費用であるパーティ費用そのものが交際費課税の対象であって、相手方の支出した祝儀に対する課税は関係ない、ということでしょう。

 結論は、(2)が正しいということになります。
会費制のパーティ費用
 前項とよく似たケースです。
 会費制の社屋完成記念パーティを開催したときは、次のどちらになるでしょうか。
 (1)パーティ費用から集めた会費を差し引いた金額を交際費とする。
 (2)パーティ費用を交際費とし、集めた会費は別途雑収入とする。

 主催した会社が上記(1)のように、差額だけを交際費とし、税務署がこれを否認して更正し、会社はそれを不服として国税審判所に審査請求をしたケースがあった。次に裁決文(要約)を紹介します。

「記念行事を会費制で行う場合は、参加者が同一記念行事の交際接待の費用を分担するものであって、参加者各自が同一記念行事のために支出するものに該当し、これに対して交際費課税の規定が適用されるものである。したがって、幹事会社が参加者から会費を集めて、記念行事の費用を支払った場合は、集めた会費による支払と幹事会社が負担した支払いとをとに明確に区分することができ、しかも、参加者の会費の支払いは、幹事会社が便宜的に参加者負担分を代払いしたものであって、幹事会社が支出した交際費には当たらない。」として、会社側の申し立てを認めた。

 いつもながら、裁決文は難しい言い回しをしますね。(1)が正解です。

 前項の、パーティ費用からいただいた祝儀を差し引くケースと、会費制のパーティと実質的にそれほどの違いはない(いただく金額において、という意味))のですが、税務の取り扱いは180度違ってきます。あらかじめ、このあたりを知った上でパーティを主催するか否かで、会社の税負担が少なからず増減するという典型的な例です。
交際費と広告宣伝費
 お歳暮など、物品の贈与も交際費課税の対象です。ところが、社名入りのカレンダーや手帳などを贈与した場合には広告宣伝効果を意図したものであるとして、交際費から除外されます。除外の要件は「慣習的」「少額」「多数の者に配布」のほか「配布の意図」が重要な要素を持っていると思われます。

 国税不服審判所の裁決例を紹介します。
 外国語テキストの出版社が大学の語学教員約1万人にダイレクトメールを送付する際に、300円程度のお茶を同封したところ、これが交際費等に該当するか否かについて争われた。(S50.7.21)

 原処分庁(税務署)が交際費等に該当するとした理由は次のとおりです。
 (1) お茶はカレンダーや手帳のように広告宣伝物品ではない。
 (2) 物品の贈与は交際費等に該当する。
 (3) 配布先は不特定多数ではなく、大学の教員に限られている。

 これ対して裁決では、「パンフレットとともに、社名などを表示して包装したお茶を同封して送付しても、出版物の需要先が限定され、潜在的な採用可能性のある者(語学教員)に対して一律に配布していることから、贈与先は不特定多数の者に該当し、主として出版物の宣伝効果を意図したものと認められるから、お茶の贈呈費用は広告宣伝費と認めるのが相当である。」として、税務署の処分を棄却した。

 ダイレクトメールが多数送付されると、開封しないでそのまま捨ててしまうことも多い。送付する側では、相手に開封させる工夫をする。お茶を同封したのもその工夫と考えられる。お茶の性質から広告宣伝物品とはいえないが、開封させるという広告宣伝効果を持っているといえる。国税不服審判所はそのような面を考慮したと思われます。
ゴルフクラブの入会金など
 ゴルフクラブの入会金、会費、年決めロッカー代、プレー代の取り扱いは次のようになっています。

1、入会金の取り扱い
(1)法人会員として入会する場合
 入会金は資産に計上します。ただし、記名式の法人会員で名義人である特定の役員又は使用人が、専ら法人の業務に関係なく利用するためこれらの人が負担すべきものであるときは、これらの人に対する給与(臨時的な給与だから賞与)となります。

(2)個人会員として入会する場合
 個人会員である特定の役員又は使用人に対する給与とします。ただし、無記名式の法人会員制度がないために個人会員として入会し、その入会金を法人が資産に計上した場合で、その入会が法人の業務の遂行上必要であるため法人が負担すべき入会金であるときは、その資産への計上が認められます。

 法人が資産に計上した入会金は償却できませんが、ゴルフクラブを脱退しても入会金が返還されない場合、返還されない部分の入会金は、その脱退をした事業年度の損金に算入します。

2、会費、年決めロッカー代の取り扱い
 ゴルフクラブに支出する年会費、年決めのロッカー代などの費用については、その入会金が資産として計上される場合には交際費とし、給与とされる場合には会員である特定の役員又は使用人に対する給与とします。

3、プレー代の取り扱い
 プレー代は法人の業務の遂行上必要と認められる場合は交際費、それ以外はプレーを行った者に対する賞与として個人に課税されます。
交際費と寄付金
 交際費等とは、得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対し、接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。

 一方、寄付金とは、金銭・物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいい、一般的に寄付金、きょ出金、見舞金などと呼ばれるものは寄付金に含まれます。

 ただし、これらの名義の支出であっても交際費等、福利厚生費などとされるものは寄付金から除かれます。

見舞金等の支出相手が取引先であれば交際費等、従業員で社内の慶弔規定などに基づいて支出されるものは福利厚生費、社長の個人的なお付き合いの相手に支出するもの社長への給与(臨時的な給与であるから役員賞与)、事業に直接関係のない者に対するもの(政治献金など)は寄付金となるでしょう。

 このように、金銭や物品などを贈与した場合に、それが寄付金になるのかそれとも交際費等になるのかは、実態をよく検討した上で判定する必要があります。

 一方、見舞金等を受け取った側の課税関係は次のようになります。
(1) 相手方の法人に対する火事見舞金など・・・雑収入として課税
(2) 相手方法人の役員従業員への病気見舞いなど・・・常識的な範囲であれば課税されない
(3) 役員従業員への病気見舞いなど・・・常識的な範囲であれば課税されない

 「常識的な範囲」というのがどの程度か、ということについては、税法には明確な表現はない。法人税関係の通達でも「社会通念上、相当な額」という表現にとどまる。結局は地域性、取引の期間や密度によって判断することになるでしょう。
交際費と売上割戻し
 会社が、得意先に対してリベート(売上割戻し)を支払う場合があります。このリベートについても交際費との区別の難しいところです。

 次の基準で支出する費用は交際費等に該当しない、すなわち売上割戻しとして損金算入できるとされています。(措置法通達61の4(1)-3)
1、売上高、売掛金回収高に比例してまたは一定額ごとに金銭で支出するもの
2、1のほか、地域の事情や協力度合いを勘案して金銭で支出する費用

 一方で、旅行に招待したり物品を贈る場合には、たとえ売上割戻しと同一の基準で行われるものであっても、これらの費用は交際費等に該当する、とされています。物品については「事業用資産」か「少額物品(おおむね3,000円以下)」で、上記の基準と同様の場合には交際費等に該当しない(措置法通達61の4(1)-4)としている。

 事業用資産かどうかの判断については、現実に贈られた側で事業用に使用している場合に限られ、役員や従業員の個人的に使用されているときは、贈った側の交際費とされることになるでしょう。受け取った会社側では、贈られた利益は益金とし、これを従業員が個人的に使用した場合は賞与(損金算入)、役員が個人的に使用した場合は役員賞与(損金不算入)となります。

 事業用資産だけを特別な扱いをしますが、それは、贈られた側で資産の価額を益金に算入されることに原因があると思われます。また、その事業用資産が広告宣伝資産である場合には特別な扱いがあります。