相続税対策のため、アパートや貸店舗を建てたという話、聞いたことありませんか?
よくある話ですよね。確かにアパートや貸店舗を建てると相続税が安くなります。
1億円を借金して、アパートを建てると、1億円の建物という財産と1億円の借入金が以前より増加します。建物の相続税評価額は固定資産税評価額そのものです。その評価額はおよそ建築価額の6割ぐらい、さらに賃貸物件の場合にはその30%程度の割引、すなわち、1億円で建てたアパートの相続税評価額は4,200万円となります。一方の借入金は額面の1億が相続財産から差し引かれます。アパートを建てたことによって相続税評価はマイナス5,800万円。さらにその敷地も15%程度の割引と、さらにマイナスされます。
現実ににアパートを建てたことによって、相続税の節税ができるわけです。じゃあアパートを建てない手はないと早合点する前にもう少し考えましょう。
ローンの期間は30年から35年、鉄筋コンクリートの建物の法定耐用年数は47年、だったら大丈夫でしょうか?
皆さんの周りで20年以上経過したアパートの状況を見てください。新築の建物とと同じような家賃で入居率もほぼ100%のアパートがありますか? ほとんどないと思います。建物としてはまだ使えるが、賃貸となると新築と同様の条件では借り手がいないという状況です。20年も経ったアパートは、よほど家賃を下げても空室が目立つのが普通です。
低金利時代であっても家賃収入の60%ぐらいをローン返済、残りで固定資産税、所得税、住民税をまかないます。さらにメンテナンスも必要と、90%以上の入居率でないと資金繰りに破綻が生じます。
相続税対策のためにアパートを建てるという場合には、20年先、30年先まで考えなくてはいけません。まだ、ローンは残っているのですから。
資金繰りに行き詰まったアパートオーナーが1棟丸ごと売りに出すケースもあります。賢い金持ちはそんな物件を安く買って、大幅な改修を施して賃貸しています。土地付きアパートの実売価額は更地価額よりも低いくらいです。それに大幅な改造を加えて新築同様の物件にしたとしても安い買い物です。
だから、私は20年以内に返済できる見込みがあったらアパート建設も検討しましょう、とお客さんには言っています。およそ15年を超えるとメンテナンス費用に多額のお金がかかるからです。
普段から、こんな話をしていたお客さんが鉄筋コンクリートの賃貸アパートの契約をしました。もちろん35年のローンです。どうして契約したの?と聞いたら、建設会社の営業マンがとてもいい人で絶対に間違いないと言うんですね。時々訪れては世間話をし、肩を揉んだりと、実の子供にもして貰えないような親切さにすっかりほだされた様子です。
建設会社によっては営業マンが契約をとれば建築価額の3%とか5%の歩合で給料がもらえる会社があるそうです。少し大きな賃貸アパートは億単位の建築価額ですね。2億円の建築価額だったら600万とか1000万のマージンです。そんなに儲かるのなら私でも肩も揉みますよ。
(上記の割引率は地域によって違います。私の住んでいる静岡県浜松の郊外における割引率です)