web会計事務所amano法人税実務講座>その他

その他

内容 ■ 前払費用の取り扱い
賞与引当金と税効果会計
税務調査




■前払費用の取り扱い

 「前払費用」とは、「一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。」(法人税法基本通達2-2-1かっこ書き)と定義されます。

 例としては、先払いの地代、損害保険料などがあります。「前払費用」は、将来の期間の費用ですから、資産として計上し、当期の費用から除外するものとされます。しかし、重要性の原則の観点から、当期の損益に及ぼす影響の少ない前払費用は本来の原則的な方法に代えて、代金を支払った年度の費用とすることを認めています。

 法人税法においても、次の通達のように会計上の取り扱いを認めています。

 前払費用の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金に額に算入しているときは、これを認める。(法人税法基本通達2-2-14)

 では、ここで問題です。次の場合には、当期の費用として認められるのはいくらでしょうか。事業年度は4月1日から翌年3月31日までとします。
(1) 事務所敷地の地代1月からの1年分120万円を12月に支払った。
(2) 5月1日からの1年分の火災保険料12万円を3月中に支払った。
(3) 従来毎月支払っていた月額4万円の社宅家賃を、家主の求めに応じて3月分から6ヶ月分を2月に前払いした。
(4) 3月から向こう2年間のリース料(月額3万円)を3月に支払った。
(5) 4月以後半年間のテレビCM料金600万円を3月に支払った。

(1)について 支払った全額が当期の費用とされる。

(2)について 役務の提供が1年を越えるので、全額が当期の費用とならない。

(3)について 支払った全額が当期の費用とされる。
 「継続して・・・」というのは、短期の前払費用を支払った年度に損金とする処理を継続して適用することを要求するもので、支払条件の継続性を要求しているものとは考えられません。

(4)について 本年3月分の3万円が当期の費用とされる。
 翌年3月分までを当期の費用、それ以降の分を前払費用とするのは誤りです。短期前払費用以外は、原則的な処理をすることになります。

(5)について 全額が当期の費用とならない。
 前払費用は継続的な役務提供の対価であって、そのときどきに役務の提供を受けるテレビCMの料金を前払いしたときは、「前払金」であって「前払費用」ではありません。従って、重要性の原則の適用はありません。




■賞与引当金と税効果会計

 会計上は次の3つの条件のもと、引当金の計上を義務付けています。
将来におけるその費用または損失の発生が確実に予定されること
その費用又は損失の金額が相当に正確に予測できること
その費用又は損失が繰入年度の収益と対応関係にあること

 中小会社の会計のあり方に関する研究報告において、「賞与の支給が見込まれる場合には、合理的な方法によって支給見込額を算定し、賞与引当金を計上しなければならない。」とし、中小会社会計指針で「賞与引当金の計上は、平成10年度改正前の法人税法による繰入額の計算によることができる。」としています。

 賞与引当金は支給時期は就業規則等によって定められ、支給金額も過去現在の経営状況に基づいて合理的に算定可能である。賞与引当金を計上しないということは存在する債務を財務諸表に計上しなかったことになり、意識するかどうかは別として粉飾のそしりを免れません。

 一方で、現在のところ法人税法においては賞与引当額の損金算入を認めていません。そこで、実務では賞与引当金を計上した上で、法人税法上の所得を計算する際利益に加算する方法がとられます。いわゆる「有税引当」といわれるものです。

 このように、会計のと税法の乖離が随所にあります。この乖離を埋めるために「税効果会計」が考え出され、現在ではかなり普及してきました。しかしながら、ただでさえわかりにくい財務諸表をますます分りにくいものにしているのではないでしょうか。財務諸表は専門家でなければ理解できないものであってはならないと思うのは私だけでしょうか。

 会計上当然のこととして認められ、それに従わなければ粉飾決算とまで言われるような事項については、税法においても損金算入を認めるべきではないかと思います。そして、専門家でなくても理解できる財務諸表とすべきでしょう。




■税務調査
 税務調査にはいわゆる強制調査(査察、映画「マルサの女」で有名になったもの)と任意調査があります。

 強制調査は裁判所発行の令状を持って会社内外を捜索するもので有無を言わせません。

 税務署の職員が行う調査は「任意調査」で関係者の了解のもとに行います。任意とはいってもかなりの権限を持って取引銀行や取引先企業にも立ち入り、取引状況を調べて調査対象の会社の帳簿と照らし合わせて適正に申告しているかどうかを調査します。

 法人税の調査は、税務署の法人課税部門が、源泉所得税と消費税も同時に行います。何もやましいことはないと思いながらも怖い存在です。
 調査の際、事前に日時を打ち合わせる場合と事前連絡なくある日突然調査に入る場合とがあります。突然の調査に備えて日頃から管理しましょう。特に現金の管理は企業として基本になりますから金庫やレジの現金残高と現金出納帳の残高と照合しておきましょう。銀行勘定は後でまとめて記入することもできますが、現金管理は「後でまとめて」は間違いのもとです。また、不正な処理は丹念に調査すれば必ず見つかるものです。見つからなかったとしたら「運が良かった」にすぎません。運頼りでは企業として心許ないですね。税法で許される範囲で節税することは堂々と行って下さい。

 災害時の訓練と同様に税務調査訓練を実施する企業もあります。税理士が調査官を演じて実際の調査と同様に行います。調査を受けた経験のない人は、税務調査の様子が分かり、また、この訓練によって会社の管理上の問題点が浮き彫りにされることもあります。

そのほかの税務調査に当たっての留意点
(1)  事前に連絡があったときには、担当者の部署と氏名は確認してメモしておきましょう。調査の予定日に都合が悪くなって日時の変更を申し入れなければならないこともあります。
(2)  金庫や引き出しの点検:実際にあった話ですが、退職した従業員がプライベートな書類を会社に残していて、しつこく尋ねられたケースもあります。
(3)  過去3年分程度の帳簿や請求書:領収書はすぐ出せるように準備しましょう。
(4)  事務所周辺の整理:カレンダーや電話番号簿にも調査官の目が光ります。ついでにゴミ箱の中も。
(5)  世間話には気を付けましょう。ベテラン調査官ほど世間話からヒントを得ようとします。



web会計事務所amanoトップページへ 法人税実務講座詳細メニューへ