内容 ■ | 決算賞与の損金算入が認められるか |
■ | 従業員給料、賞与、退職金の損金不算入 |
■ | 執行役員 |
■決算賞与の損金算入が認められるか |
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会社の損金算入時期の原則は、費用又は損失としての債務が確定した事業年度です。では、従業員賞与の損金算入時期はいつか? という問題について考えてみます。 賞与の損金算入時期は、原則として現金主義によりますが、次の場合には未払賞与を認めています。もちろん、損金経理が要件となっています。なお、この取り扱いは使用人賞与の部分だけで、役員の賞与は含みませんので誤解のないようお願いします。 (1) 労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額の通知がされているものに限る。)については、当該支給予定日又は当該通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。(法人税法施行令134条の2第1項第1号、一部省略) (2) 次に掲げる要件のすべてを満たす賞与については、使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。(法人税法施行令134条の2第1項第2号、一部省略) イ 支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること。 ロ 通知金額を通知をしたすべての使用人に対し、事業年度末日の翌日から一月以内に支払つていること。 (1)をもう少し具体的にいうと、就業規則などに定められた支給予定日が到来したけど、資金繰りの都合で支払ができないというときに、未払賞与の計上を認めています。 また(2)では、決算日に従業員全員に賞与支給金額を通知していること、翌年度初めの1ヶ月以内に賞与を支給していることを条件に未払賞与を認めています。これが「決算賞与」といわれるものです。 会社の業績がいいときは税金を納めるよりも、頑張ってくれた従業員にいくらかでも還元したいと考える経営者は多いものです。しかし、決算日を経過してから「決算賞与」の相談があっても、その年度の損金とすることは無理です。事前に手を打っておくことが大切です。 なお、「支給額の通知」は、口頭でもいいのでしょうが、文書で通知するとともに通知書の会社控えに確認のサインをもらっておくことをおすすめします。やはり、証拠ということを考えたときには、口頭での通知は弱いと思います。 税務署員は何でも疑う、という人が多いですね。実際に文書で決算賞与を通知した上、会社控えに確認印を押してあったときも、「本当に本人が押したのか」と、従業員の何人かに尋ねたことがありました。従業員も1年近く前のことで忘れて曖昧な返事をした人もいて疑われてしまいました。従業員全員の認印を用意している会社が多数存在する現実を考えれば、税務署の調査官が疑うのも無理はないでしょう。そのような理由から、私は、認印よりサイン(本人の署名)をお薦めしています。 |
■従業員給料、賞与、退職金の損金不算入 |
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従業員に支払う給料、賞与、退職金は次のケースを除いて損金算入されます。一般従業員に支払う給与は正常な取引に基づいて支払われるものであって、恣意的に高すぎる給与を支払うことはあり得ないからです。ところが、社長の家族などが従業員として働いているときなど他の従業員の比較して「不相当に高額」な給与を支払って法人税の負担軽減を図るといった問題に対処するため、税制調査会法人課税小委員会の提言を受けて平成10年度の税制改正により次の規定が設けられました。 (過大な使用人給与の損金不算入) 内国法人がその役員と政令で定める特殊の関係のある使用人に対して支給する給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。 (法人税法第36条) ここでいう「給与」とは、給料、賞与および退職金を指すことは言うまでもありません。役員の家族に対してこのように厳しい取り扱いをするのは、本来ならその役員自身の報酬や賞与とするところを、名目上、家族である従業員に支給するようなケースもあったからでしょう。 平成10年度の税制改正前において損金算入が無条件に認められていたたわけではありません。税務の現場では、従業員である社長の家族に「不相当に高額」な給与を支払っていた場合には、実質的に社長の給与であろうとして課税していたケースがあります。 |
■執行役員 |
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執行役員という制度は、日本では平成9年にソニーが導入したという比較的新しい制度です。しかし、上場企業を中心にこの制度を採用する会社はずいぶん多くなっています。(googleで検索すると200万件を超すヒットがあります。) 執行役員制度を導入することで取締役を削減し、会社全体の観点からの意思決定と各事業部門での業務執行を分離し、責任の明確化と迅速で効率的な経営を図ることを目的とした制度といわれています。社長以下業務執行を行う取締役も存在するが、ここでは取締役としての職責を有しない執行役員の税務上の立場について考えることにします。 執行役員は現行会社法上の規定はなく、法律上の取締役ではないと考えられています。執行役員は、代表取締役以下の取締役の指揮・監督のもと、一定の権限と責任が付与されて事業部門の執行を担当する使用人ということになります。また、執行役員は、取締役の指揮・監督下で業務に従事し賃金が支払われている以上その契約形態は一般に雇用契約と解されています。したがって、執行役員も労働基準法上の労働者と考えられます。 以上のことから考えると、執行役員は法人税法上の役員に該当するとは考えられません。したがって、賞与については他の使用人と同様、原則として損金扱いとなりましょう。(法人税法上の「みなし役員」に該当する執行役員に支給された賞与は損金不算入など他の取締役と同様に損金不算入となります。) 社会において、すでに一般化した感のある執行役員ですが、税務上は通達等も公開されていないようで、取り扱いの基準が明確でないと思われます。しかし、取締役でない執行役員は会社の経営方針を決定する取締役会の議決権もなく「経営に従事」と判断することはできません。そこからも税務上の役員という扱いはできないという結論になるでしょう。 一方、執行役は会社法418条に定められた役職で、法人税法において役員とされます。よく似た名称で混同されるが、法律上の地位は全く異なります。 |
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