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洋蘭の話

 このコーナーでは写真を掲載していません。洋蘭の性質や栽培方法を説明します。写真をご覧になりたい方は検索していただければ豊富に掲載されています。そちらでご覧下さい。また、現地を見てきたように記述していますが、私は一度も蘭の原産地を見ていません。全部人の話や本による知識ですので間違っているかもしれません。

 洋蘭の栽培は難しいという方が多いですね。ところがその性質を知れば他の園芸植物より楽だと思います。私のように少々の不精者でも時期が来れば花が咲いてくれます。もちろん花屋さんで売っているような立派なものではありませんが・・・。

1、洋蘭の生育環境

2、栽培に失敗するパターン(着生欄の場合)

3、蘭の繁殖

4、栽培のポイント

 (1) カトレアの仲間

 (2) デンドロビウムの仲間

 (3) シンビジウムの仲間

 

 
1、洋蘭の生育環境

 蘭科の植物は世界各地に自生していてその種類は数万種といわれます。これは園芸的に改良された品種は含まない数字です。私たちの身近にあるネジバナも蘭科の植物ですが、芝生の中から生えたり道路の中央分離帯の雑草に混じって生えているのを見かけます。蘭の内「洋蘭」といわれるのは主に東南アジアや南米に自生しているものが多く栽培されています。洋蘭が栽培された初期の頃には欧米から輸入されたことから「洋蘭」といわれるようになったものでしょう。洋蘭の性質を知るためには、もともと自生していた地域がどんな気候でどんな場所に生えていたかを知ることが近道です。

 東南アジアや南米の熱帯地方に共通していることは、ともに雨季と乾季がはっきりしていることです。この地方では蘭を含む植物は雨期に生育して乾期には水分の蒸散をおさえて生育を休んでいます。

 園芸店でよく見かけるカトレア、デンドロビウム、シンビジウムなどの多くは山中の樹木や岩に根を張って生育します(このような蘭を着生蘭といいます)。日本原産の蘭ではセッコクやフウランがこの着生蘭です。これらの仲間は茎や根が太く、葉が厚く、その中に水分を蓄えることができ、水分を蒸散しにくい構造になっています。雨季に十分水分を吸収して蓄え、乾季にはじっと休んで水分を逃がさない性質があります。だから、一週間位旅行のため水やりができなくても枯れることはありません。日本の気候では春から夏にかけて生育期、秋から冬が休眠期となるものが多いでしょう。

 一方、地生蘭といわれる、普通の植物のように地面に生えている蘭もあります。日本の蘭では前述のネジバナの他シラン、シュンラン、エビネ、アツモリソウなどがこの仲間です。洋蘭ではパフィオペディラムがこれに該当します。これらは水分を蓄える茎がなく(あってもごくわずか)蘭の仲間では乾燥には比較的弱いとされます。といっても普通の植物より過湿に弱いので普通の土に植え込むのはよくありません。

 標高2000m以上の高山に自生している高山植物と言える蘭もあります。熱帯地方といってもこのような地域はかなり気温が低くなるようです。高山植物の蘭にとって日本の夏は暑すぎて夏に枯れることが多いでしょう。最近園芸店で見かけるようになったマスデバリア、ミルトニアなどはこの類の蘭です。夏越しの難しいことを覚悟して栽培する必要があります。 

 贈答品として使われることの多い洋蘭に胡蝶蘭(ファレノプシス)があります。豪華な花をつけるので、育てて来年も花を見たいと思う人が多い蘭です。胡蝶蘭は東南アジアの標高の低い地域の樹木に着生します。そのため、冬の最低温度が15℃位必要です。暑さには強いが、寒さに弱いので温室以外の環境では冬越しが難しい蘭です。

 温室がなくても栽培が比較的容易な蘭は、シンビジウム、カトレア、デンドロビウムなどがあります。なかでも、お勧めはカトレアです。特に小型のカトレアは比較的寒さに強く、冬にも狭い場所で栽培でき、カトレアらしい豪華な花をつけるのが多いのも魅力です。

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2、栽培に失敗するパターン(着生蘭の場合)

失敗の例 原 因 と 対 策         
秋から冬に水を与え
すぎる
 秋、冬が休眠期となる種類はこの期間水が多すぎると生育が止まらなくなり冬越しができません。水苔などの表面が乾いてから2〜3日経過して水はたっぷりとやります。表面が乾いていても、中心部は湿っているからです。乾かすことが重要です。私の場合、冬は10日に一度くらいの間隔で水を与えています。ただし、これは環境により差があるのであくまでも目安と考えましょう。
 秋から冬でもつぼみが出始めてから花が咲き終わるまでは少し多めに水を与えます。
鉢の中が常に水分を
含んだ状態
受け皿に水が溜まっている状態だと根から呼吸できなくて根が傷みます。
春以降の生育期に
部屋の中に置く
 特に生育期は太陽光線が必要。庭の木陰で栽培するのが理想。木陰がないときは遮光ネットを張ればいい。秋の終わりに部屋に取り込み、春、桜が散った頃庭に出すのがよいでしょう。
大きな鉢に植える 着生欄は常に根が空気に触れている。鉢の中でも中心部は空気の流通が悪く、周辺部の方がよく通る。鉢が小さすぎると思うぐらいの方が生育がよいようです。
普通の土に植える 蘭は水苔やバーク(木の皮のチップ)、軽石など空気の流通のよい材料で植えられている。原産地では苔のついた樹木に着生し、根は常に空気に触れている。普通の園芸用土では窒息します。
肥料の与えすぎ 蘭は生育の遅い植物だから肥料は少なめに与える。生育期に少量の肥料を与え、休眠期には全く与えなくてよい。他の草花と同じ量では多すぎます。

以上、カトレアなど着生欄の栽培のポイントは人工的に雨季と乾季を作ること、雨季は生育期、乾季は休眠期というように生育リズムに合わせること、根は空気に触れるような用土(ミズゴケ、バークチップなど)で植えることです。これであなたも洋蘭の栽培ができるはずです。

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3、蘭の繁殖

 蘭は生育の遅い植物で、発芽してから開花まで5年程度かかります。一つの子房に数十万から百万以上の種子をつけ、その中でいくつかの種子が発芽するというように発芽率はきわめて低いものです。自然界ではある種の菌の力を借りて発芽するといわれています。昔は蘭の増殖方法は株分けによる方法か偶然に近い種子からの発芽だけでした。現在では人工的に発芽率を高め大量の苗を生産する手法が確立され(無菌培養)、また成長点を増殖させ同一性質の株を大量に生産する方法(メリクロン)の確立もあって大量生産が可能となり我々のような一般の人の手に届く価格となりました。

 蘭の生産場を訪問すると化学実験室のように機材のそろった部屋でフラスコに入れられた蘭の苗を見ることができます。無菌培養された蘭の苗です。そこは空調の完備した部屋で様々な器具が整然と並べられ、さらにその奥のクリーンルームで白衣を着た人たちが作業をしています。ただし、一般の訪問者はこのような作業室に入れてくれませんが。

 私ども趣味家はそのような設備はとうてい無理で、繁殖といえば株分けだけです。株分けでの増殖は2年間で2倍程度であるから本当にゆっくりした増殖です。数十年前までは洋蘭といえば貴族の趣味といわれた訳がわかります。

 このように生育の遅い植物だから肥料の量は他の園芸植物に比べると少なすぎると思われるぐらいでちょうどいいでしょう。

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 以下主に栽培されている種類について説明します。

 4、栽培のポイント

(1) カトレアの仲間

 カトレアの仲間は南米熱帯地方の原産の蘭で、現地では木や岩に着生しています。熱帯地方といっても、ある程度程度の高地(海抜500mから1000mぐらいが多い)に自生していますので日本の暑さはこたえるようです。寒さにも比較的強い種類が多く、温室のない家庭でも立派な花を咲かせることができます。特に、ミニカトレアといわれる根元から葉の先まで15cm以内程度のカトレアは寒さに強い種類が多いので、冬は明るい窓辺で十分育てられます。
 開花時期も種類によって四季を通じて豊富にあります。花色は代表的な赤紫の他、真紅、白、黄、黄緑、またこれらの中間的な色や白の花弁にリップ(中央の舌状の弁)だけ赤とかバラエティに富んでいます。
 カトレアの栽培はポイントをつかめば洋蘭の中でも比較的容易です。是非挑戦してみて下さい。


 春から夏の生育期にはたっぷりと与えます。夜の温度が25度以上の時は夕方も霧水を与える。夏から秋にかけて、生育が止まったら水を控えめにする。冬は鉢の水苔が完全に乾いてから3日ぐらい後にたっぷり与える(水苔植えの場合)。休眠期は乾燥も遅いのでおおむね1週間に1度位でしょうか。冬でも花が咲いている株は乾燥が早いので多めに水やりする。

 芽が伸び始める頃、4号鉢で親指頭大の玉肥2〜3個ぐらいの置肥をする。その後は2週間に一度くらい液肥を与えるとよいが、私の場合、液肥は農薬散布の際一緒に与えるだけです。液肥入りの容器ごと鉢土に挿していることを見かけるが、蘭の場合には禁物(鉢の中が常に湿った状態になる)です。休眠期に肥料を与えると根が傷むので、これも禁物です。カトレアに限らず蘭は生育の遅い植物ですから他の植物に比べ肥料は少なめにします。



 庭に大きな木があればその下に吊ればよいでしょう。鉢数が多いときは棚に置けば多数の栽培が可能です。大きな木がないときは栽培場所の上に遮光率50%位の遮光ネットを張ります。地面に直接置くは好ましくありません。
春から夏は雨に当ててかまいませんが、秋は休眠期に入るので雨よけをしましょう。冬は霜の降りる前に部屋に取り込みます。具体的には地域によって異なりますが、私の住んでいる浜松では11月初めの連休頃が最適です。



 株が鉢からはみ出るぐらいになったら植え替えます。水苔やバーク植えの場合、およそ2年に1回ぐらいの目安です。木やヘゴ板に付けて栽培している場合には植え替える必要はありません。植え替えるとき白い生き生きとした根は切り取らないで大切に扱います。植込み材料は、元の材料と同じものを使うのがよいでしょう。
 リード(新しく成長した茎)が2つ以上あるときは株分けをすることができます。
 鉢は素焼鉢が最も適しています。プラスチック鉢や化粧鉢に植えられているものは、素焼鉢に植え替えて下さい。開花して部屋に飾るときだけ鉢カバーを使うとよいでしょう。

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(2) デンドロビウムの仲間

 デンドロビウムの仲間はタイ、ビルマなど東南アジアの原産の蘭で、原地ではカトレアと同様、木や岩に着生しています。寒さにも強い種類が多く、家庭でも十分育てられます。冬から春に園芸店で見かけるデンドロビウムの多くはノビル系といわれるタイプで多肉質の茎に花がたくさん付きます。日本のセッコクもノビル系にきわめて近く、交配の親にも使われています。デンドロビウムはノビル系以外にも多くの種類があり、花色も開花時期も変化に富んでいます。中には栽培の難しい種類もありますが、多くは特別な設備がなくても容易に育てられます。特にセッコクを親に使ったものは寒さに強く、私の住む静岡県では庭木に付けて戸外で栽培することもできます。デンファレといわれるものもデンドロビウムの仲間で、栽培は難しくありませんが、高温性の蘭で温室がないと冬越しが難しいものです。
 以下、ノビル系デンドロビウムを中心に説明します。


 春から夏の生育期にはたっぷりと与えます。夜の温度が25度以上の時は夕方も霧水を与える。秋の初め生育が止まり茎(バルブ)が充実する時期は水を控えめにする。秋の終わりから冬は鉢の水苔が完全に乾いてから3日ぐらい後にたっぷり与える。冬でも花が咲いている株は乾燥が早いので多めに水やりするのもカトレアと同じです。

 カトレアと同じ程度。芽が伸び始める頃に置肥をする。その後は2週間に一度くらい液肥を与えるとよい。休眠期に肥料を与えると根が傷むのはカトレアと同じです。



 カトレアより多めに日光に当てた方がよい。遮光率30%位の遮光ネットが適しています。カトレアもデンドロビウムも一緒に栽培している場合には50%の遮光ネットを張って午前の光が直接射し込むような場所にデンドロビウム、それ以外に場所にカトレアを置けばよいでしょう。西日が直接射し込む場所は適当ではありません。地面に直接置くは好ましくありません。春から夏は雨に当ててかまいませんが、秋は休眠期に入るので雨よけをしましょう。冬は霜の降りる前に家の中の取り込みます。



 水苔植えのものはおおむね2年に1回植え替えます。2年経過しなくても水苔が腐ったら植え替えなければいけません。バーク植えの場合も同様です。ヘゴ板や木に付けて栽培している場合には植え替える必要はありません。
 植込み材料、鉢についてはカトレアと同じです。

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(3) シンビジウムの仲間

 シンビジウムの仲間はタイ、ビルマなど東南アジアの原産の蘭で、現地ではデンドロビウムと同様、木や岩に着生していますが日本のシュンランや中国原産のシンビジウムは地面に生えています(地生欄)。栽培されているシンビジウムは交配種が大半で着生蘭と地生欄の中間的な性質のものが多いようです。デンドロビウムと同様、寒さにも強い種類が多く、家庭でも十分育てられます。開花時期はほとんどが春です。園芸店では年末に多く見かけますが、これは業者が開花調整をしているためで、家庭で栽培する場合には桜の咲く頃に開花します。


 カトレアやデンドロビウムより多めに水を与えます。春から夏の生育期には毎日たっぷりと与えます。熱帯夜には夕方も霧水を与えると生育がよい。秋の初め生育が止まり茎(バルブ)が充実する時期は水を控えめにするが、デンドロビウムより多めにする。開花時期には乾燥が早いので多めに水やりするのもカトレアやデンドロビウムと同じです。

 芽が伸び始める頃から初夏にかけて月一回程度置肥をする。カトレアやデンドロビウムより多めに与える(6号鉢で親指大の玉肥を5個ぐらい)。梅雨明けからは肥料を与えない。



 デンドロビウムと同じ程度日光に当てた方がよい。遮光率30%位のネットが適していると思いますが、全く遮光をしないで栽培している人もいます。西日が当たらなければ直射日光でもいいようです。地面に直接置くは好ましくありません。春から夏は雨に当ててかまいませんが、秋の雨は黒点病の発生原因になるようです。冬は霜の降りる前に部屋に取り込みます。



 新株が生育する余地がないほどになったら植え替え時です。植え替えは3月終わり頃が適していますが、ちょうどそのころが開花期に当たります。植え替える株は早めに切り花としてできるだけ早く植え替えましょう。用土は元の用土と同じものを使います。最近ではバークを使ったものが多いと思います。新芽が2方向から出ている場合には2つに分けることができます。私の場合、株を鉢から抜いた後 (1)ハサミやノコギリで下3分の1を切り取り (2)新芽を残るように二つに切り取り、古いバルブ(根元の球状のもので3年以上経過したもの)を取り去って植えつけます。乱暴なようですが、根を一本一本丁寧にほぐすより後の生育がいいようです。


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