web会計事務所amano法人税実務講座詳細メニュー第 31 号

メールマガジンバックナンバー

第  31 号

内 容  商品等の販売による収益
検収基準が合理的でない場合


 しばらく、現物給与の類いを取り上げてきましたが、元の法人税法に戻ります。2週ほどはあまり面白くないところでしょうが、少し我慢をお願いします

■商品等の販売による収益

 法人税法においては、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。その場合の収益の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。」(法人税法第22条第2項、第4項) と規定するとおり、法人税法とともに会計学の知識も必要です。

 企業会計は、収益をその実現した会計期間において認識します。「収益の実現」とは、商品製品などの棚卸資産にあっては、原則として商品を引き渡したときということになります。

 法人税法でも、次の通りの通達があり、基本的に会計学の取り扱いと変わりがありません。

 「棚卸資産の販売による収益の額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。」(法人税法基本通達2-1-1)
 「棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。」(法人税法基本通達2-1-2)

 「出荷した日」とは、文字通り当社の倉庫から運送業者のトラックに積み込んで出荷した日であって、相手方に到着していない場合であっても、その時点で売上計上することになります。法的には相手方に到着し、品物を確認し受け取ったという意志が表明された時点で「引き渡し」があったということになりますが、実務においては出荷の時点で売上計上することがむしろ普通で税務においてもこれを認めているといえます。

 「検収」とは、納品の相手方が注文した品を、数量・種類などを点検して受け取ることで、検収基準は製造業者間の取引で多く用いられています。

 機械販売では、購入先に機械を据え付け、試運転をして使用可能な状態にした時点で販売が完了する場合があります。このようなときは「使用収益ができることとなった日」をもって収益計上を行うこともあります。


■検収基準が合理的でない場合
 
 「販売」をいつの時点ととらえるのかについて、複数の認められる基準がありますが、いずれの場合にも「継続して適用すること」に加えて「その基準が合理的であること」が条件です。

 検収基準は、納品の相手方が注文した品を、数量・種類などを点検して受け取った時に収益を計上する基準で、法的にも売上債権が確定したと認められる基準です。

 ところが、検収のつど検収書を発行しないで、数日間の検収分をまとめて検収書を発行するなど、検収の日が事実と食い違うことがあると検収基準が合理的とはいえません。また、注文の品に間違いがない限り自動的に商品を引き取るという契約内容のときなども検収基準が合理的といえないでしょう。

また、自動車の販売のように登録してから納品(納車)する商品の場合には、登録手続きに入る時点ですでに所有権が移転していると考えられ、登録完了後の納品し受領印をもらった日を販売の日とし、売上計上するのは合理的といえないでしょう。これは既製服販売で、寸法直しをした後納品するケースにも当てはまるでしょう。

 合法的な処理だと思っていたことが不合理と判断され、思わぬところから税金を追徴されることがあります。売上げの計上時期などは十分に検討して疎漏のないようにしましょう。