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第  16 号

内容  福利厚生費とされる慰安旅行費
     「社会通念上一般的に行われている」と認められる慰安旅行


■福利厚生費とされる慰安旅行費

 従業員慰安旅行を行った場合に、会社が負担した費用が「社会通念上一般的に行われていると認められるもの」であれば、非課税(参加した従業員に対して)の福利厚生費とされ、そうでないものは給与として参加した従業員に所得税が課税されます。

社会通念上一般的に行われていると認められる慰安旅行
 従業員慰安旅行(海外旅行を含む)で、次のいずれにも該当する場合には、給与として課税しない扱いになっています。
(1)旅行の期間が4泊5日以内であること。
(2)旅行に参加した人数が全体の人数の半分以上であること。
(3)会社負担の費用が1人当たり10万円程度以内(あくまで"程度"であって10万円を超えたものはダメということではない。)

 なお、海外旅行の場合には、国内の宿泊数を含めず、外国での滞在日数が4泊5日以内であれば上記に該当します。また、支店単位で行う場合にはその支店の従業員の半分以上が参加でよいことになっています。

 次の場合には非課税となる福利厚生費には該当しません。
(1) 課長以上というように従業員の一部だけが参加する旅行
           ・・・給与として課税
(2) 取引先が同行する旅行・・・会社負担の旅費全額が交際費等として課税
(3) 不参加者に旅費相当の金銭を支給するとき
           ・・・参加者、不参加者とも給与として課税

上記で「給与として課税」とは、役員、従業員の側で給与として源泉所得税の対象とするということです。会社の側で見ると臨時的な給与すなわち賞与という取り扱いになり、従業員部分は損金算入ですが、役員部分は損金不算入となります。

参考:国税庁 知っておきたい税情報「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」 http://www.taxanser.nta.go.jp/2603.HTM


■「社会通念上一般的に行われている」と認められる慰安旅行
 
引き続き「慰安旅行」を取り上げます。

 過去においては、海外旅行はすべて給与として課税する、という時代があった。ある裁判において、昭和56年に行った2泊3日の香港旅行で1人当たりの会社負担額2万円、参加人数38%の慰安旅行について「一般的なもの」と認めて、税務当局の判断を誤りとした例がある。その後、3泊4回以内と変わり、現在では4泊5日となっている。このように、「4泊5日」は相対的なものであって、社会情勢の変化により基準も変ってゆく。

 税務がいつまでも4泊5日、10万円程度の会社負担、50%以上の参加という形式的な基準にこだわると、会社が現に行っている社員の希望を取り入れた慰安旅行との距離が生ずる。国税当局は、極力統一した基準を設けようとして「社会通念上一般的に行われていると認められる」慰安旅行を上記のように定めたのであろうが、社会常識の方が常に先行していることは、過去の判例で明らかです。

 近年、従業員慰安旅行は、画一的、宴会中心型から、若者が参加しやすいように多様化している。目的地に到着してから、テニス、ハイキング、ショッピングというように希望によって別行動をとる慰安旅行もあるといいます。

 また、会社の福利厚生事業で、「カフェテリアプラン」といわれるものが新聞紙上を賑わしたことがあった。会社が用意した多くのメニューの中から従業員が自ら受けたいサービスを選ぶものです。このような新しい形態に税務が後追いしているのが現状です。

 会社においては、冒険を避けて福利厚生事業を税務の基準に合わせるだけでなく、ときには税務の矛盾点を突くことも必要です。とはいっても、不服申立や裁判は大変なエネルギーを要するため、踏み切ることに躊躇するのが現状です。