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日本の消費税率は低いか?

 消費税率の引き上げが話題になっています。

 財務省が公開している消費税率(付加価値税率)の国際比較のグラフです。
   
  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/102.htm
 これを見ると日本の消費税率は圧倒的に低いですね。

 このグラフを見て、税率の引き上げはやむをえないと考えるのは早計です。税率だけの比較では正確な判断ができません。

 第一に、北欧諸国のように高福祉の国では高負担になるのが当然です。給付と負担の両方を考えなければいけません。

 第二に、社会保障の負担額(健康保険や厚生年金など)との関係も無視してはいけません。保険料負担がなく(少なく)、その分消費税などの税で社会保障費を賄っている場合には、消費税率がある程度高くても仕方がないですね。

 第三に、日本のように単一税率の国と欧米のような複数税率の国を単純比較するのも誤解を招きます。

 このように、いろいろな要素を考慮した上で、現在の日本の消費税率が国際的に異常に低いのかを考える必要がありそうです。

 三つめのところを、もう少し掘り下げてみます。

(1)食料品などの生活必需品の低率課税

 日本では、食料品など生活必需品もぜいたく品もすべて5%の税率です。イギリス、カナダ、オーストラリアでは、生活必需品について0%税率、その他大半の国では軽減税率を採用しています。そのため、最低限の生活をする限りは消費税の負担が少ないといわれます。

 その結果、税収(国税)に占める消費税の割合を比べる記事が次のように紹介されています。
   日本      36.3%
   イギリス    38.4%%
   オーストラリア 26.8%
  日刊ゲンダイ(2010年6月26日掲載)より引用(ゲンダイネット「日本の消費税率は低い」は大ウソ
  (古い新聞記事はアクセスできなくなることがあるのでPDFファイルで紹介しています。)

 これを見ると、日本の消費税も国の予算レベルではかなりのものです。決して諸外国に引けを取らないことがわかります。

(2)非課税という名のまやかし

 日本の消費税には「非課税」とされるものがあります。保険診療、学校の教科書、住宅家賃などです。「非課税」というと、消費者は全く税負担がないと思われているようですが、これが大変な誤解です。政府が、これを意図的に税負担がないと思わせているとしたら「まやかし」です。

 次の場合で考えてみましょう。
 将来、消費税率が10%となり
  1、食料品の税率 10%の課税
  2、食料品は小売段階で非課税
  3、食料品は5%の軽減税率の課税
  4、食料品は小売段階で0%税率の課税   の4パターンで考えてみます。
  食料品は、製造業者から卸売業者へ6,000円、卸売業者から小売業者へ7,000円、小売価額は10,000円とします。

1、非課税の場合は小売の段階で課税がないだけで前段階の消費税は国の税収(消費者の負担)となります。
2、その結果、上記の場合は5%軽減課税の方が国の税収(=消費者の負担)が少ないことがわかります。
3、イギリスなどでは、食料品などの生活必需品について0%税率が採用されています。

 日本の消費税法で規定している『非課税』はまやかしで、本当の意味の非課税は『0%税率の課税』でなければなりません。将来、食料品は小売段階で『非課税』というような議論になったとき、ごまかされないようにしましょうね。従来の『課税』から『非課税』になったとしても、非課税物品に対する税収は、ゼロではなく2〜3割(小売店のマージン)減少するだけです。

 忘れてはいけないのは、複数税率の課税方式になると、消費税を納税する事業者の事務負担は格段に増加することです。国は消費税の徴収事務を事業者に押し付けて、何の手当てもしないというのでは事業者側から不満が出るのは当然です。
 何らかの方法で、事務費ぐらいは事業者に還元してくださいね。それは、現実に余分にかかる費用なんですから。
 

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