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印紙税の不合理さ 印紙税を御存知ですか? 収入印紙のことです。領収書や契約書などの文書に収入印紙を貼り、消印をすることによって印紙税を納付したことになります。 ところで、どんな場合に収入印紙を貼るのか、あるいは貼らなくていいのかの判断は難しいところがあります。 『本体価格が29,800円で消費税等が1,490円、合計売上高31,290円』のケースで領収証の書き方が次の場合で考えてください。 1、領収金額 ¥31,290.−(内訳の記入なし) 2、領収金額 ¥31,290.−(「内消費税等1,490円」と記入) 3、領収金額 ¥31,290.−(「税抜価額29,800円」と記入) 書類上で、税抜き価額と消費税とが区別されていないときは、その金額(31,290円)で収入印紙を貼るかどうかを判断します。一方、税抜き価額と消費税とが区別できるときは、税抜き価額で判断することになります。 したがって、上記の1は200円の収入印紙が必要、2と3は不要ということになります。このように、実質的に全く同じ領収書でありながら、領収書の記入の仕方によって印紙税の金額が変わってしまうというのは釈然としない方も多いと思います。印紙税法をわかりにくくしている原因の一つでしょう。 また、発注元から注文書が送付され、それに対する注文請書を交付する場合があります。この注文請書は、押印がなくても一般的に契約書とみなされ、印紙税の対象になります。 ところが、同じ内容を電子メールで送信する場合には、電子メールは電子データであり文書ではないということから、印紙税の課税対象から外れることになります。FAXで送信した場合も、受信側では紙で出力することが多いでしょうが、これも、コピーと同様の扱いとして印紙税はかかりません。送信用の原本を相手に交付せず社内で保存する場合には、印紙税の対象外です。 同様に、会社設立の際には、紙での定款認証の場合は4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款という電磁的記録に電子署名を付した場合には収入印紙が不要となります。 平成17年3月15日付の国会答弁書において、「印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める文書課税であるところ、電磁的記録については、一般にその改ざん及びその改ざんの痕跡の消去が文書に比べ容易なことが多いという特性を有しており、現時点においては、電磁的記録が一律に文書と同等程度に法律関係の安定化に寄与し得る状況にあるとは考えていない。」と説明しているが、民間企業においては,役所ほどには紙の文書にこだわっていないという現実をどう見るのでしょうか。 EDIと呼ばれるシステムは、取引企業などがコンピュータをネットワークで繋ぎ、伝票や文書を自動的に電子データで交換する仕組みです。これを利用すれば、企業間の受発注などの一連の取引が全てペーパーレスで行われます。ここには、印紙税法に規定される課税文書は存在の余地がありません。取引業者に強制力を行使しやすい大企業ではEDIが当然のごとく取り入れられています。このことは、御存知の方も多いでしょう。EDIシステムの導入の難しい中小、零細企業は、印紙税の分野では完全に取り残されてしまっています。 電子データも紙による文書も、その背後にある経済的利益という点では同じであるにもかかわらず、紙の文書だけが印紙税の課税対象というのは先の国会答弁書における説明に合理性がなく、私には理解できません。印紙税法は現代の電子化の時代においては、もはや賞味期限の切れた時代遅れの法律であり、その役目は終わったと見るべきでしょう。 |